★だい38わ:おまじない★


ま「ここか・・・テレビでしか見たことなかったけど、なんてデカい城だ・・・こんなトコであのチビっ子たちは授業を受けてたのか・・・?」
*「そこの貴様!、なんだその恰好は!」
ま「アンタ、ここの守衛か何かか?――、俺は西の町164地域からここにたどり着いた、星際機関初等部ってのはこの辺でいいのか?」
*「164地域・・・!、たしかあそこは2・3日前に大規模な山火事で壊滅的被害を受けた――、まさか、歩いてここまで来たというのか?」
ま「歩いたり飛んだりだがな・・・、それより何だよ山火事って、アンタら知らないのか、俺たちの町は黒い集団に襲われたんだ!」
*「黒い集団?、襲われた・・・!?、どういうことだ!?、と、とにかく詳しい話は中で聞かせてもらおう!」

***

王「なるほど、山火事と報道されていたニュースはデタラメで、実際は黒いローブを全身に纏ったふたり組に襲撃された、と・・・」
ま「そうだ・・・メディアは何を伝えてやがる・・・!」
王「大臣、ワシの憶測通りじゃ、さっそく164地域周囲の報道局を捜索せよ!」
大「承知いたしました!」
王「ふぅ・・・遠いところを本当にご苦労様です、まやら殿――、どうぞ、楽にしてください」
ま「あ、はい――」
王「実のところ、ここ最近の報道はいくつか不可解な点がありましてな」
ま「不可解な?」
王「これまで何件か報道されているニュースの中には、物的証拠が何一つ無いところで起きている事件が散見されておりましてな」
ま「どういうことですか?」
王「何の目的かまでは分からないが、本来あるべき情報を意図的に操作している報道局員がいるのではないかと」
ま「意図的に・・・じゃあ、俺の町が破壊された事実も、そいつらの嘘の報道で山火事?、ってことで片づけられたってことですか・・・!」
王「あなたの証言と、さきほどいただいたこの紙に記されたメッセージが何よりの証拠」
ま「その紙きれに何かあるんですか?」
王「この紙はほんのわずかだが持ち主の魔力が込められた特別仕様の物――このとらんぷたうん界隈のほんの一部にしか流通されていない学校の――全員ではないが生徒に配っているのですよ、まぁ言わば生徒手帳みたいな物ですな」
ま「生徒手帳?、・・・にしてはずいぶん大きいんですね」
王「便宜上そういわれてるだけですよ―――で、これに付属されている、これも魔力を取り込んだ特殊なペンなのですが、字を書いた妖精の魔力が少しづつ宿り、日々の鍛錬との積み重ね次第でレベルが上がると少しの間だがノートの表紙と裏表紙が光り輝くことになっている」
ま「へぇ・・・、つまりは生徒の実力を測るってわけか」
王「それもありますが、有事の際にこれを使って救済要請などのメッセージを書いて切り離し、誰かに託すといった手段としても活用できる」
ま「すげぇ・・・それをあんな小さな子が――」
王「時にこれを渡した、みるふぃ殿でしたか?、その子は今どこに・・・?」
ま「・・・・・・」
王「どうされました?」
ま「町を襲撃した連中を倒すといって、潜伏している森の中へ・・・」
王「森・・・164地域――――――・・・・・・、出国準備中の捜索隊に追加発令を!、最重要機密事項において"みるふぃと言う名の幼い女の子の捜索”を命ずる!」
*「はっ!!」
王「急ぐのだ!、事は一刻を争う!」
ま「あ、あのぉ、俺はこのあとどうすれば・・・?、初等部に行ったほうがいいのかな?」
王「なりませぬ」
ま「え?」
王「この件はとらんぷたうん最重要機密事項において発令させた、よって今話した一連の件は、どうか他言無用でお願いしたい――その代わり、あなたの身柄はワシらとらんぷたうんが責任をもって保護致します」
ま「(・・・・・・オレ、あの時無理にでもみるふぃちゃんを引き留めておくべきだったかな・・・)」







――謎の施設を散策して早や数日。
あれから謎の魔法使いは姿を見せない。
このホテルに勤めてるメイドさん、らしき妖精が食事やら身の周りのお世話は
定期的にしてくれてるので、普通に暮らす分には何ら困らないけど。

例の建物に関しては、どこを歩いてもエレベーターも無ければ、非常階段もない。
見渡す限りはただ真っ白な空間が続くだけ。
オイラたちの持てる魔法なんてほんの僅か。それをどう駆使すれば別室に行けるのか?
・・・こんなレベルのオイラたちが、ふぇありぃとらんぷになれる力が備わってる―――
なんて言われても、到底実感もなければ想像もつかない・・・
そもそも、あの魔法使いが一体何モンなのかもいまだ分かりゃしないってのに、
考えりゃ考えるほどグッチャになってくみたいだ――――

ただ不思議に思うのはそれだけじゃない。
こはきゅがまったくホームシックにならないということだ。
ふつうこんな小さな子が突然見たこともない所に放り出されたら、
普通は泣きぐずって収拾がつかなくなってしまうところなのだが。

思えば、このねおたうんってトコに着いてすぐにこはきゅに掛けたおまじない・・・
あのあたりからこはきゅは急にオイラに懐いてきたり。
かといってお母さんを気に掛ける様子もあれから一切見せなくなったり。
オイラの考えすぎかもしれないが、どうもいままでのこはきゅとは・・・多分、違う。


「おまじない」・・・て、何だよ。


こ「ちゅにんくん、なにかいてるのぉ〜?」
ち「うぉ、ほ、ほらえっと、オイラあの日記帳置いてきちまったからさ、部屋にあったメモ帳持ってきてこれまでのこと書いてたんだよ」
こ「そーなんだぁ――ねぇねぇ、ほんと〜にこのみちでい〜のかなぁ?」
ち「多分な・・・分かんないけど」
こ「またまいごになっちゃったりしないかなぁ〜・・・」
ち「それにしてもだ、持てる力を使えって言うから、どうしたもんかと思ったら―――ただの壁紙で隠しただけとかバカにしてんのかアイツ・・・!――でも、ホントよく見つけたよな、こはきゅ」
こ「えっへん☆(`・∀・´)」
ち「・・・ずいぶん長い通路だ・・・まるでカラクリ屋敷みたいだ」
こ「からくり?」
ち「こんなのお散歩ってレベルじゃねぇぞ、部屋に戻れなくなったらどうしよう――」
こ「えぇ〜、こはきゅたち、もどれないのぉ?(´・Д・`)」
ち「ん、向こう側が何か光ってる、こはきゅ、行ってみよう!」
こ「ん!、おーおー♪」


―――――――・・・・・・
―――・・・・・・
・・・

ガヤガヤ――――――・・・


ち「な・・・なんだよこれ・・・!」
こ「ひろぉぉぉぉぉい!すっごぉい、いっぱいよーせーさんがいるぅ〜」


*「どうやらあなたたちが最後のふたりのようね―――」
こ「ん、おねえさんだぁれ?」
*「君たちならもっと早く着くと思ったけれど、思ったより時間掛ったわね」
こ「オバチャンだーっ」
ち「・・・アンタ、オイラたちに一体何をさせる気だ・・・?」

―――只今をもって、当校の編入試験を締め切らせていただきます―――
ち「編入試験?」
*「そうよ、ギリギリだったけどあななたちも合格♪」
こ「ごーかく?」
*「さすがに5分前を切ったときはヒヤっとしたけど、君たちならきっと来てくれるって信じてたわ」
ち「なぁ!、いい加減オイラたちに何をさせたいのかちゃんと説明しろよ!」
*「さぁさ、まもなく入学式が始まるわ!――う〜〜んと、こはきゅちゃんは――まぁギリギリオーケーかな、でもちゅにんくんはもう少しドレスアップしたほうがいいわね、それ!」

シャララ―――――・・・・・・

ち「!」
こ「わ!、スーツだかっこいー♪」
ち「な・・・え・・・」
*「では改めて・・・・・・、ようこそ”ねおたうん高等学部へ”!―――」
ち「こ、高等学部・・・!?」

*「遅いわよ、なかよしカップルさん」
こ「あ」
ち「あ、あ〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

← だい37わ  だい39わ →