★だい31わ:あとつぎは、おまえさんじゃ★


さ「まだか、まだ着かないのか?」
ふ「く・・・なんでこういう時に限って渋滞になっちゃうかなぁ!?」
も「コイツはさすがに困ったな…何としてでも間に合わせないといけないというのに・・・!」
ら「アナタ、しもんさんの目的はさくらさんよ、アナタたちだけでも先に行ってらっしゃいな、私たちはいつでもいいのですから・・・」
も「・・・いいのか、最後を看取ってやれなくなるかもしれないんだぞ?」
の「看取る・・・?」
ら「このままモタモタしていても結果は一緒ですわ、私たちのことは構いませんわ、さぁ、お急ぎなさい・・・!」
も「ありがとう、ライ――よし!さくらさん、急いでしもん氏の元へ行きましょう!」
さ「え、行くってどうやって?」
も「私がさくらさんを乗せて空を飛んでいきます、この方が断然早い!さぁ、早く!」
さ「て・・・俺、結構上背あるから重いだろうよ?」
も「なぁに、私は体力には自信あるんですよ?、さぁしっかり掴まっててくださいね?」
さ「ヨイしょっ・・・ホントに重くねぇのか?」
も「大丈夫です、さぁ行きますよ!」

ギュン―――!!!

き「うわ、速っや!」
の「あ、あの・・・一体何がどうなってるんですか?」
ふ「・・・・・・」
き「なぁ、看取るって何だよ?」
ら「・・・とっても辛いことを言ってしまうことになるけれど、話してもいいかしら?」
の「まさか、しもんさんの身に何か…?」
き「バカのえる!、じいちゃんならさっきあんだけメチャクチャ元気な声でやいのやいの怒鳴ってたじゃねーか!?」
ら「・・・・・・おそらく、ここ最近のしもんさんが見せた姿は、すべてしもんさん特有の呪術によるもの」
ふ「え・・・?」





さ「うわ・・・コイツは確かに早い…まともに目も開けてられないや・・・! アンタ、本当にすげぇ魔法使いなんだな!」
も「いいえこの程度、これからふぇありぃとらんぷになるであろうあのおふたりに比べたら足元にも及びません」
さ「アンタが足元にも及ばないってカンタンに言うか…?」
も「ええそうですとも、何たって、我々の常識を遥かに超える魔法を使えますし、戦争や様々な難病にも決して怯むことなく戦える、我々妖精社会において絶対的な存在、それがふぇありぃとらんぷですから」
さ「絶対的な存在、か―――でも、昔のふぇありぃとらんぷですら、戦争を止めるのは一筋縄じゃなかったんだろ?」
も「それは多分、過去のふぇありぃとらんぷは一般市民から選ばれたからでしょう、ちゅにんくんでしたか?、男の子の方――彼もそのいい例です」
さ「ってことは、こはきゅちゃんは・・・」
も「さぞかし、今まで想像したことのない、とんでもない力を秘めたふぇありぃとらんぷになってくれるでしょうねぇ、何たって、両親はふたりともふぇありぃとらんぷを経験しているんですから・・・!」
さ「・・・何だかもう世界が違いすぎてワケわかんねぇな・・・!」
も「何を仰いますか!、さくらさん、あなたもこれからその大きな世界を動かすかもしれない存在になるのかもしれないんですよ?」
さ「へ? 何で俺が?」
も「ん、着きますよ、しっかり掴まっててくださいね!」

――スタッ――

も「さぁ、行きましょう――ごめんください、もろこしとさくらさんです」
め「お父さん、それにさくらさん・・・!」
も「おぉめるてぃ、そうか、お前が看ててくれたんだな」
め「話はすべて聞いてるわ、さぁ、さくらさん急いでください!」
さ「え・・・・・・?」

さ「な・・・・・・! 何だよコレ・・・ジーさん、何でアンタ・・・! さっきまで王室中に響くくらい元気だったはずじゃんかよ・・・何で・・・!」
〔お、おぉ・・・思ったより、早く着いたようじゃな・・・よし・・・これなら間に合う・・・〕
さ「な、なんだよ、間に合うって何だよ? 何だってんだよ!?」
〔それを、説明する必要はない・・・なぜなら、これからワシの今まで得た、呪術と、知識、記憶、すべてが、お前さんの物に、なるんじゃからな・・・〕
さ「え・・・!?」
〔ワシはもう、こんなじゃからなぁ・・・ただひとり、ワシの呪術を、経験している、お前さんに・・・これからを・・・託すことにした・・・!〕
さ「何バカなこと言ってんだよ!、そんなこと・・・」
〔お迎えが来る前に、サッサと済ませるぞ・・・〕
さ「・・・そ、そんな・・・」
め「お父さん、他のみんなは?」
も「あぁ、ふらわさんの車で移動中なんだが、途中で渋滞に巻き込まれてしまってな・・・さくらさんをここまで強引に引っ張りだしてきた」
め「空飛んで来たのね?、目は大丈夫?」
も「あぁ、それは全然心配ない、さ、それより儀式が始まる、もう少し下がろう」
め「え、ええ!」

〔さくらよ、右手を出せ・・・!〕
さ「アンタ、本気かよ・・・!」
〔サッサと出さんかい、バカもんが・・・!〕
さ「あ、あぁ・・・」
〔そのまま、ワシの手を、離すなよ――よいか、さくらよ・・・これからワシと呪術奥義のひとつである、融合術をやる〕
さ「融合術?」
〔ワシのような、クソジジイと融合なんてのは、イヤじゃろうがな・・・今からやるのは、体の融合じゃなく、力と魂の、融合じゃ〕
さ「力と魂の・・・」
〔左様・・・ワシが死んでしまっては、元も子もないからのう・・・これは、ワシだけじゃない、今まで先代の呪術使いも、こうして、力と魂を受け継いで、今に至っているのじゃ・・・ワシのあとつぎは、さくら、お前さんじゃ―――さぁ、始めるぞ――!〕


ギュン―――――――!!!!!!!!


さ「うぐ・・・!―――――――――――――」





の「きらら、あれ見て!」
き「ん? あ、遠くから何か光ってる!」
ら「始まったんですね、ついに・・・!」
ふ「一体、何が起きてるってんだい?」
ら「しもんさんは・・・まもなく、この世を去ります――」
き「えぇ?」
の「そんな・・・この世を去るって・・・!?」
ふ「・・・あのおじいさんのことだ、ただでは死なないんだろ? きっと、何かやらかしてくれるんだろ・・・!」
ら「間に合ってよかったわ・・・あなた・・・!」

*******

さ「ぐ・・・・・・う・・・う・・・」
め「眩しい・・・でも何・・・魔力とは違う何かを感じる・・・!」
も「これが呪術か・・・それもとんでもない力だ・・・なるほど、呪術使いとして初めてふぇありぃとらんぷを経験されただけはある・・・」
め「ふぇありぃとらんぷ?」



――――――カッ――――――――――――――・・・・・・

―――――――――――――

――――――――

――――

め「あれ、しもんさんは?、いない・・・」
も「さようなら、しもん殿・・・貴方の多大なる功績と慈悲、そして平和への貢献に感謝いたします・・・ありがとうございました―――」
さ「ハアハア・・・!」
め「さ、さくらさん、大丈夫ですか?」

さ「・・・そうか、そういうことだったのか・・・、今まで平気でクソジジイなんて言ってしまったのは悪かったな・・・アンタも色々辛いこと、あったんだな・・・」
め「さくらさん・・・」
も「気分は、いかがですか?」
さ「うん・・・まぁ、正直言って、あんまいい気分はしないな・・・知りたくもないことをすべて知ってしまうってのは、何かな・・・でも、あの長生きしたジーさんのやってきたことが如何にスゴいことも今初めて知った・・・」
も「不謹慎な言い方かも知れませんが・・・成功ということでいいんですね?」
さ「あぁ、ジーサンが昔ふぇありぃとらんぷをやってたってのも分かる気がする――妙な気分だけどよ、今のオレなら、妖精大汚点とも何でか戦えちゃう気がするものな・・・」
も「畑は違えど、私の力はもう不要ですかな?」
さ「オレもじーさんもほんの少しだが魔力は持ってた・・・それが合わさってもせいぜい1+1=2程度のモンだけどさ、呪術にはなぜか浮遊に関するそれは持ち合わせて無いようだ・・・だからさ、今度、空の飛び方を教えてくれ」
も「私でよろしければ、お安い御用です♪」
さ「それと、出来ればでいいんだが、もうひとつ頼みがある」
も「?」


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