★だい29わ:ふたりのあかし★


*「(ふむ・・・やっぱりこの移動手段がベストだよね・・・さすがにここからは瞬間移動の橋渡しでは色々危険すぎるか・・・子供とはいえふたりを抱えて飛ぶしかないか・・・まぁ、時間は十分あるから問題ないけどね)」
こ「すごぉい・・・むらがどんどんとおくなってく」
ち「なぁアンタ、いきなりオイラたちを連れてどこに行く気なんだよ!?」
*「・・・唐突だけど、今君たちふたりの左手に填めている指輪、何だか分かるかな?」
こ「ゆびわ?」
ち「指輪・・・さっきレストランでご飯食べた後、急に出てきたんだよなぁ、何なんだよ、これ」
こ「あ、こはきゅとおそろいだ〜っ」
ち「お、お、そ、そうか・・・///」
*「その指輪はただの指輪じゃないのよ、伝説の魔法使い「ふぇありぃとらんぷ」になれる証しなのよ!、あなたたちは選ばれたの!」
こ「へありーとらんぷ?」
ち「な・・・! ふぇありぃとらんぷだって・・・!?」
*「そ!厳正な抽選の末、見事に当選したあなたたちは、これからその啓示を受けてもらいま〜す♪」
ち「啓示・・・儀式みたいなモンか?」
*「そうね、そうとも言うかもしれないわね?」
ち「でも何でオイラたちが・・・?」
*「心当たりはない? その指輪が君たちの手元にある理由を」
こ「ちゅにんくんのゆびわはあおいろだね〜、こはきゅのはみどりっ!」
ち「指輪・・・指輪・・・―――・・・はっ!?」
*「思い出した?」
ち「こはきゅ! こないだ学校でスケッチしに行った日だ! あのデカい白詰草がバ――って光った時だ!」
こ「お? お?」
ち「ひょっとして・・・アレがふぇありぃとらんぷになれる儀式だったのか?」
*「儀式はこれから行く場所で受けるから、正確にはちょっと違うわね――巨大な白詰草・・・あの花はね、ふぇありぃとらんぷとしての称号を持った妖精だけが扱える特別な魔法よ」
ち「ふぇありぃとらんぷの称号を持った・・・?」
*「あなた達ふたりが、こはきゅちゃんのお母さんの魔力を受け継いだのよ」
ち「は・・・?こはきゅママが・・・? 何でこはきゅママがここで出てくんの?」
*「だって、あの花はお母さんの魔法そのものだからよ」
ち「え・・・!?」
*「それよりキミ、今の外の景色が見えるかい?」
ち「外?、速すぎてよく見えないよ」
*「ではちょっとだけ一時停止―――どう?」
こ「あ、あっちでケンカしてる!ケンカはよくない!」
ち「ケンカどころか・・・ちょっと待て、これはどうみても戦争じゃねぇか・・・! どうなっちまってんだ・・・!」
*「妖精大汚点のことは知ってる? その残党が仕掛けた抗争なのよ」
ち「妖精大汚点って・・・まだ居たの・・・か・・・ウソ・・・だろ・・・!」
*「これ以上凄惨な現場を今の君たちに見せたくないから先に進むわよ――」

ギュン―――

こ「わ!」
ち「う、体が・・・!」
*「あらゴメンね、急発進だったかな? で、君たちの住んでる村は今のところ平和そのものなんだけど、村を出た先は今見た通り妖精大汚点らが仕掛けた争いが世界中のあちこちで起きている・・・そのうち、君たちの村にも妖精大汚点が押し寄せてくるかも分からない・・・残念だけど、これが現実よ」
ち「こっちにも来るって・・・!?」
こ「ケンカはよくない!」
*「そう、ケンカはよくないよね? だからこそ、君たちがこの紛争を終わらせるためのカギを握ってるの」
ち「(・・・ゴクッ・・・)なんでオイラたちが・・・」
こ「きーぱーそん!」
*「アハっ、よく知ってるねぇ♪――ちゅにんくん、大丈夫よ、あなた達がふぇありぃとらんぷになりさえすれば必ずこの戦争も終わらせられるし、こはきゅちゃん、お母さんの病気も絶対治せるわ」
こ「うん! こはきゅ、がんばる!」
*「さぁ、もうしばらくしたら到着よ!」
ち「(コイツ・・・誰なんだ・・・なんでオイラたちのことをここまで知ってんだ・・・?)」



も「こはきゅちゃんとちゅにんくんは今、ねおたうんに向かっているのです」
さ「・・・・・・やっぱアイツらが次のふぇありぃとらんぷ、か?」
も「おそらく、そうなるでしょうねぇ」
さ「・・・・・・」
き「ちょ、ちょ、ちょっと待てよ、こはきゅとちゅにんがふぇありぃとらんぷってどういうことだよ!?」
も「あなたたちは直接見ていないでしょうが、彼らは母親であるはーつ氏の初期啓示を受けたから、現国王からの召集を受けたのでしょう」
の「国王・・・? 初期啓示・・・?」
も「そう、この星そのものを統べる妖精に、ね」
き「あ・・・う・・・そっか・・・何かアイツらが一気に遠くに行っちゃった気がするな・・・現にそうなんだけどさ」
も「いやいや、そんなことは無いよ、彼らにはこの星の平和のためにちょっとお手伝いをして貰うだけで、これまでの生活そのものを一変させようって訳じゃない、ただ、しばらく離ればなれにはなってしまうけどね」
き「・・・こはきゅとはまだ出会ってろくすっぽ経ってないんだよ・・・やっとこの環境に馴染んできたばかりなのに・・・お母さんがあんな状態じゃ仕方ないかもしれないけどさ、それにしたって・・・くそ・・・!」
も「うん・・・お母さんもきっと苦渋の決断だったと思うよ・・・あの病にさえ罹らなければ、こんなことにはきっとならなかっただろうけど、こはきゅちゃんはまだ幼く小さい、さすがにあの子を残して逝くわけには・・・ね、だからこはきゅちゃんのためにお母さんは生きる選択をした――おじさんはそう思うな」
さ「オレは後悔してる・・・あの時、はーつを庇って自分が罹ってた方がまだマシだったってな・・・!・・・チキショウ!!!」
も「自分を責めちゃいけない・・・誰の命も、比べようは無いし、そして尊い」
さ「く・・・!」
も「そこで、我々に出来ることをこれからしようと思うのですが」
ふ「・・・アタシたちに出来ること?」
も「めるてぃにはすべて話してます、みるふぃは・・・こはきゅちゃんと同じ、まだまだ年端も行かない子だから本当は内緒のままにしておきたかったんですけど・・・どうやら、あの子は見た目と相反して、我々が思った以上に随分大人なようだ・・・さっきとらんぷたうんから発つ時に見た表情で分かりました」
き「ねぇ、アタシたちに出来ることって何?」
も「そうですね・・・きららちゃんにのえるちゃん、だったよね? あなたたちおふたりは、もうしばらく先の話ですが、まずはきっちり初等部を卒業すること」
の「卒業?」
も「それでもって、中等部の授業もきちんと学びつつ、放課後とかの空き時間を見つけて、私自らおふたりに色々な魔法を伝授します」
ら「まぁ、それはステキね☆」
き「おじさんが直に・・・?」
も「こう見えて、私と家内はめるてぃと言うエキスパートに色々教えた身でもありますからね」
き「信じます・・・だって、めるね・・・めるてぃ先生の親だもん、それにみるふぃだってアタシたちよりもずっととんでもない力持ってたし、なぁのえる、やろうぜ!」
の「そうね・・・私たちはまずこれからふぇあるぃとらんぷになるこはきゅちゃんとちゅにんくんに少しでも近づかなくちゃ・・・なんだよね?」
も「――決まりです、ね」
さ「オレも・・・オレもそれ・・・混ぜてもらっていいか?」
の「さくら社長?」
さ「元々はーつがこうなっちまったのはオレの責任だ・・・魔力も呪術も今はお前達に比べたら足手まといだけどさ・・・でもこのままモヤモヤした気持ちのまんまのうのうと過ごすのはイヤだ・・・!」
き「何言ってんだよ、だいたい仕事はどーすんだよ? 仮にも社長だろ?」
さ「仕事か・・・元より、さっききららちゃんが話したようにオレはニュースで取り沙汰された前科モンってことで村中に広まってるんだろ・・・? そんなオレにはもう社員や客たちに顔向けなんか出来やしねぇ、引退だよ・・・」
し「(何を辛気クサいことヌかしとんのじゃバカたれが!)」
き「だ、誰だ!?」
ら「あら、この声はしもんさんじゃございませんの? どこからお話なさってるのかしら?」
し「(アタリじゃ、もろこしもらいむぎちゃんも久しぶりじゃのぉ、元気そうでなによりじゃ、ワシは一足先に帰って呪術でお前さんがたが移動してる車に向かって声を送り出してるトコロなんじゃよ、それにしてもそこのバカ社長!さっき王室で話してた勢いはどこに行ったんじゃ!?)」
ふ「すごい・・・こんなことまで出来てしまえるの?」
さ「・・・・・・」
き「・・・なぁのえる、アタシ、やっぱさっき言い過ぎたか?」
の「そうよ!まったくもう!」
し「(それよりさくら、戻ったらワシん家に来い!)」
さ「は?」
し「(呪術を極めたいんじゃろ? )」


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