★だい27わ:うごく、とき★


さ「策って何だよ?」
し「ワシの知り合いではーつの事情を知るヤツが居ってのぉ、ソイツにも一役買ってもらってるんじゃ」
王「は、はぁ・・・」
し「ワシの知り合いっつっても年寄りで残ってるのはたったひとりなんじゃがのぉ、まぁ出来るヤツなのは確かじゃ、期待してよいぞ! さて他に質問は無いかの?」
さ「それじゃもう一ついいか?」
し「何じゃ?」
さ「はーつとこはきゅちゃんの仇を取ったほいすとたちのその後はどうなったんだ?」
し「ほいすと達のか? それはワシも分からんよ」
さ「え?」
し「ワシはちょうどその頃・・・今のお前さんぐらいの齢に引退をして、国を出たんじゃよ」
さ「は? ・・・何でそんな早く?」
し「散々話したが、ワシの魔力は知識があっても進歩が無い・・・どういうわけか、いくら努力しても伸びることは無かった・・・いや、正確には戦争が終わってからは魔法そのものが使えなくなってしまった・・・そうなってしまっては国にとってはワシはお払い箱みたいなモンじゃろうし、何よりワシ自身がそれでものうのうとあの国で過ごそうってのはどうじゃろう・・・それが引退した理由じゃ」
さ「・・・」
し「正直、悔しかったよ・・・何にも悪いことも疾しいこともした覚えも無いのに魔法封印みたいな状態になってしまった――こんな仕打ちはないとさえ思ったわい」
さ「・・・アンタも結構苦労したんだな」
し「王族や兵士たちの周りで脳なしがのうのうとしているのも気が引けるし――じゃからこの際だ、国を離れて魔法なしでどこまで生きていけるか・・・そのことに掛けてみようと思った・・・元々魔力を持たない蒼き星の連中みたいに逞しく生きていけるかをな・・・!」
さ「呪術ってヤツはいつ習得したんだ?」
し「あぁ・・・あれは生まれつきじゃ、ワシの血筋が元々それを使える素質らしくてのぉ・・・ワシもそのルーツはよく分からん、何たって気の遠くなるくらいはるか昔にさかのぼる話じゃからのう」
さ「・・・そっか・・・」
し「それにワシは情けないことを言うと、異性と永遠の契りを交わすことは無かった――魔法在り気で成り立った妖精たちにとってこんな古くて黴の生えた呪術を広める気にもならんよ」
さ「そんなことはネェよ」
し「え?」
さ「アンタの呪術があったからこそ、はーつも誰も死なずに済む歴史になれるかも知れないんだ、あの時オレはアンタに頼み込んで習った甲斐があったよ」
し「フフ・・・お前さんらしくないセリフじゃのぉ・・・でも、何よりもお前さんのその行動からすべてが始まったんじゃ、ワシが誉めておく・・・その代わり!」
さ「その代わり?」
し「お前さんが最後まではーつ親子を見守ってやれぃ――――さくら、明日いつでもいいからワシの家に来い!」
さ「は、何で?」
し「いいか、絶対にじゃぞ! じゃあな!」
さ「・・・何だよ一体・・・?」

―――フッ・・・

大「き、消えた・・・」
さ「あれはさっきじーさんが言ってた呪術の一つである、言わば瞬間移動術ってトコか・・・魔力関係なしに、行きたいところ、誰かの今いる所を嗅ぎ分けて一瞬で移動出来る・・・あれさえあれば車も要らないな」
王「さて、ではワシたちも動くとするか」
大「ハ・・・では手始めに・・・?」
王「城を締め出すとしよう、ここからは軍事機密にて任務を遂行する」
大「はっ!」
さ「オレはどうすりゃいいんだ? ここに連れてかれたからにゃあ、別にこのまま軟禁生活でもイイけどよ」
王「何を言う、この星を守る為にはあなたの力も絶対必要だ」
さ「ヘへ、大した力は期待できねぇけどな、 んじゃさっそく村に戻ってオレも行動に移すぜ! 世話になったな王様大臣!」
大「くれぐれも怪しい行動だけは慎むんじゃぞ」
さ「ヌかせ、ジジい! あばよ!!」
大「んな・・・!」


き「(おい、まだ着かねぇのか?)」
み「(思った以上にここは複雑な構造のようね・・・これも魔力によるものなのかな・・・?)」
の「(魔力?)」
み「(うん・・・魔力でわざと外観を狭くして・・・実際はとてつもない広さとややこしい進路に設計した・・・)」
の「(・・・言われてみれば・・・こんなに歩くほど広くは無かったはずなのに)」
み「(噂では昔のように名うての魔法遣いは居なくなって、弱体化してしまったとは聞いたことがあるけど・・・ちょっと高を括っちゃったかなぁ)」
き「(なぁ、お前の魔力で飛んで移動するとか出来ねぇの?)」
み「(この状態ではさすがにムリ、姿を隠す魔法って見た目は地味だけど結構な魔力を使っちゃうの、持ってあと15分ってトコかな)」
の「(15分、それしか無いの!?)」
み「(そう、だからそれまでに何としても王様の所へ辿り着かなくちゃ・・・)」
き「(・・・アタシたち・・・ひょっとして、とんでもない地雷踏んじゃったかな・・・?)」
み「(ちょっと待って!――あれ、どういうこと? ひとりは気配すら完全に消えた・・・魔力のごく小さい方だ・・・どうなってるの・・・?)」
き「(消えたって? どういうことだ?)」
み「(・・・もう少し急ぐわよ・・・! みんな散り散りにならないうちに・・・!)」
き「(お、おう・・・!)」
ドカッ――☆
き「(イッテぇ・・・急に止まんなみるふぃ!)」
の「(今度はどうしたの?)」
み「(いつも一緒にいるあのハラペコ君、何て名前だっけ?)」
き「(ちゅにんのことか――てか、アイツが来てることも知ってんのか!?)」
み「(彼の気配も消えた・・・!)」
の「(え・・・?)」


こ「スースー・・・」
*「・・・よかった・・・ギリギリ間に合ったわね・・・」

ウィ―――ン――

*「――!」
*「ご家族の方ですか?」
*「はい、家族と言うかこの子の母の従姉妹です・・・おか・・・はーちゃんの容態は・・・?」
*「ええ、今のところお母さんの命に別状はありません」
*「そうですか・・・最近会えなかったし、連絡も付かないから心配して来てみて正解でした」
*「おそらく心労が祟ったと思われます、しばらく安静にしていれば数日もあれば退院できると思います」
*「よかった・・・あの、教えて下さい、はーちゃんは何の病に罹ったか分かりますか?」
*「・・・・・・この子とお母さん以外に一緒に住んでいる家族は、確か居らっしゃらないんですよね・・・分かりました、あなたにはお教えしますが、あまりこのことを他言することの無いようにして下さい・・・それと、覚悟して聞いて下さい、宜しいですか?」
*「は、はい・・・!」
*「今ではありえないはずの症状なのですが・・・・・・お母さんの病気には、その昔起きた戦争で使われた“細胞破壊”と言われる魔法が掛けられていて、破壊の進行そのものは非常に弱いんですけれど、放ってしまえば数年以内には確実に命に関わる難病、その疑いがあります」
*「細胞破壊?」
*「ええ、いまでは星全体を通して完全に封印し、違法に指定されている禁じ手の魔法――ですがどうも最近になって誰かがそれを持ち出して悪用しているとか・・・ニュースはご覧になってませんでしたか? 最近そんな報道が広まってるんですよ」
*「・・・いいえ、私はテレビは殆ど見ないもので・・・初めて聞きました」
*「まさかとは思いましたけど、こんな田舎にまで禁じ手が伸びているなんて・・・」
*「治す方法はないのですか?」
*「・・・残念ながら・・・自然に罹った病気でしたら症状を抑えたり、手術などである程度のリカバーは出来ますが」
*「自然に罹るのと魔法による病気とは違うのですか?」
*「ええ、この細胞破壊は魔力の消費にかかわらず、あくまで使用した妖精の力そのものに左右されると言われてます、極々弱い威力でゆっくり症状を進行させるものから、それこそ一瞬で命どころか肉体そのものまで畳み掛けてしまうものまで様々です」
*「・・・! 魔法を掛けた側の力に因ると言ってましたが、それはずっと残るんですか?」
*「私もニュースで知った話ですが、この魔法の厄介な所は、妖精の力量に左右されてはいるが、仮に何らか命を落としたからと言って治るわけではなく、罹ってしまったら進行は防げない・・・」
*「では・・・白詰草があれば治せますか?」
*「白詰草・・・私たち妖精族にとっての特効薬と言われている幻の薬、私は見たことがないので何とも言えませんが、確かにそれがあればここまで苦労することは無かったかも知れませんね・・・あ、ナースコール! スミマセン、私はこれで――」
*「あ、はい、どうもありがとうございました」
こ「ん・・・」
*「あら・・・?おはよう、こはきゅちゃん」
こ「ん・・・おばちゃん、だぁれ・・・?」
*「初めましてこはきゅちゃん、おばちゃんはあなたのお母さんの従姉妹よ」
こ「いとこ?」



こ「よかった・・・おかあさん、ぶじなんだね」
*「ええ、たまたま私がここを通りかかったからよかったものの・・・ねぇこはきゅちゃん、お母さんはしばらくこの病院に入院しなきゃいけないみたいなの、そこで突然なんだけど、お母さんが退院するまでの間、おばちゃんのトコに一緒に暮らさない?」
こ「イヤ!こはきゅはおかあさんといっしょにいる!」
*「と言うと思ったわ・・・でも最後まで聞いて、お母さんはこのままではちゃんと病気を治せないらしいの、で、さっき看護婦さんともお話したんだけど、おばちゃんね、お母さんの病気を完全に治せる方法を教えてもらったの」
こ「かんぜんに?」
*「そう、でもそれには少なくともおばちゃんとこはきゅちゃんが一緒じゃないとダメなの」
こ「こはきゅが?」
*「うん、おばちゃんだけではどうしてもできないことなの、少しでも早くお母さんの病気を治してあげたいでしょ?」
こ「それは・・・うん、おかあさん、はやくゲンキになってほしい・・・!」
*「よし、決まりね!それじゃ早速だけど行きましょう、おばちゃんの手を取って」
こ「こ、こう?」
*「あ、そうそう、もうひとりこはきゅちゃんのよぉく知ってるお友達にも来てもらうことになってるの、まずはその子と合流してからね」
こ「う、うん」
*「よし、では出発!」

――シュン――・・・!

ち「ハァ〜ごちそうさまぁぁ〜(人´∀`).☆.。.:*・゚」
ふ「・・・・・・話には聞いてたけど、あんな小っこい体でまさかここまでペロっと平らげちゃうとはね・・・はぁ、今日は散財も甚だしいったらないわね――あれ、ちゅにんくん、その左手どうしたんだい?」
ち「え? うぉ、何だコレ?」
ふ「指輪・・・?」

――シュン――・・・!

*「おじゃまします、ちょっとそこの子借りてきますね!」
こ「ちゅにんくん!?」
ち「うぉ!こはきゅ!・・・と、誰だ?」
ふ「何だい何だい!?」

――シュン――・・・!

ふ「・・・え・・・!? どうなってんだい、一体?」



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