★だい22わ:じゅじゅつ★


さ「そのダイヤのふぇありぃとらんぷは今も健在ですよ」
王大「・・・・・・!!」
さ「ふぇありぃとらんぷの中で一番年下――魔力は一番の非力・・・兵力もなぽれやほいすとたちとははるかに劣るレベル・・・しかし、体力と不思議な呪術に関してはピカイチの才能を持つ伏兵がね」
王「そ、それはまことか・・・!?」
さ「ええ、あの成りだから最初は全く気付きませんでしたがね」
大「おぉ・・・」
さ「意外や意外、星際期間の初等科学校からほど近いところに今も住んでますよ」
王「なんと・・・ご健在であったか!」
さ「思いがけない盲点でしたよ――まさかあのお気楽じ〜さんが今もなお生けるふぇありぃとらんぷだったとはね・・・!」
大「お、お気楽じ〜さん・・・」
さ「ずいぶん前に近所の居酒屋でたまたま居合わせましてね――で、一緒にくだらない話をしたんですよ、そこで―――・・・」



さ「ふぅ・・・いつまで占めてりゃ気が済むんだ?・・・おかげで仕事にならねぇや・・・クソっ・・・!」
*「何をひとりでブツクサ言っとるんじゃ、若造」
さ「しもんのじ〜さんか・・・アンタもこんな夜中にノコノコ出歩いて大丈夫なんか? どこかに妖精大汚点が潜んでるかも分からんぞ」
し「イッピキオオカミがへべれけになって誰となくグチっているのよりマシじゃ――おい兄ちゃん、ワシにもコイツと同じ酒を頼む」
*「あいよっ!」
さ「おいおい、この酒結構強いんだぜ? 大丈夫かよ?」
し「お前さんみたいに軟な体じゃないわい!」




し「なるほどなぁ〜・・・まだそんなツッパった連中が住んどるのか」
さ「ったく困ったモンだよ・・・こないだもニュースでやってたろ? 無闇に城に侵入して誰だか忘れたが夜な夜な命を狙おうとして呆気なく捕まったバカがよ」
し「ふむ・・・平和になったと偏に言えないモンじゃな・・・・・・魔法・・・か・・・ワシの術は役に立てそうもないかの・・・?」
さ「術? 魔法か?」
し「ワシも若い頃は名うての魔法遣いと肩を並べて国を守ってきたんじゃがのぉ・・・」
さ「何だよ? 名うての魔法遣いって・・・そんな話初耳だぜ・・・!」
し「今はもう引退してご隠居状態じゃしもう時効も時効じゃ、お酒も入ったし大サービスで話してやろう――ワシはかつて、四大妖精のひとりとしての地位に居た」
さ「(ブッ、ゲホゲホ・・・)」
し「・・・噎せるこたぁネェだろうよ・・・」
さ「ゲハハハハハハハ!!!!! じ〜さんがふぇありぃとらんぷぅ〜!? ソイツはとんだ笑い種だぜヘハハハハハ!!!」
し「ま、お前さんのことだからそう言うと思ったわぃ・・・では酔っ払ってちぃと気分がよくなったから更に大サービスとしてお前さんに見せてやろう・・・ワシが本物のふぇありぃとらんぷじゃって証拠をな・・・」
さ「なに? 何か唱えるんか? 大丈夫か〜ヘハハハハ―――」
し「ムンっ!」


・・・・・・・・・


さ「何だよ、やっぱ何も起きねぇじゃんか」
し「3ヶ月・・・いやもっと・・・半年前か・・・? となり町の商店街で働いてる・・・これは喫茶店じゃな・・・ウェイトレスの女子にプロポーズしてフラれおったみたいじゃの?」
さ「な・・・・・・!」
し「お前さんの中では完ペキに脈アリだと思ってたみたいじゃがの・・・相手はどうやらすでに別の妖精と婚約をした後のようじゃったの・・・タイミングとか以前にお前さんはバカじゃの」
さ「な、何でそんなことを・・・誰にもしゃべってないハズなのに・・・!」
し「どぉれ・・・もう一つお前さんの黒歴史を掘り出してみようかの」
さ「・・・う・・・ウソだろ・・・?」
し「ム、これは・・・赤毛の、髪を後ろに束ねた・・・ずいぶん小っちゃい子じゃの・・・でも何となくワシも知った顔じゃのぉ」
さ「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
し「何じゃ、これからが楽しみじゃと言うのに」
さ「た、頼む・・・! それだけは止めてくれ! 頼む!」
し「・・・・・・お前さん、一体何をやらかしたのじゃ・・・?」
さ「し、信じるよ・・・! 俺、じ〜さんを信じるからさぁ、今のだけは勘弁してくれ、頼む〜〜!!!」
し「ふんっ、ワシを嘗めたらイタイ目に遭うぞ、よぉく覚えておくんじゃな」
さ「・・・あ〜ビックリした・・・!」



王「・・・・・・」
大「・・・き、貴様・・・その後の経緯を察した上で訊くが・・・別の意味で罪と言わんか・・・?」
さ「言っておきますが、未遂です、未遂」
大「当たり前だ!バカモン!!」
王「ゴ、ゴホン――と、とにかく・・・続きを頼む」
さ「その日はそれで別れたんですが、別の日にとらんぷたうんに配達に行った後、時間が出来たんで博物館に立ち寄ったんです――当時はまだあの大掛かりな増築が出来てそんなに経ってない頃だったか・・・前々から興味があったんで一度覗いてみたいと思って――・・・」
王「そこで初めて過去の――はーつの歴史を垣間見た・・・と」
さ「はい・・・だってあまりにも可愛そうすぎますよ・・・ガキの頃に散々不自由を強いられて、苦労してやっとふぇありぃとらんぷになって、家族幸せになって、子供が生まれて、さぁやっとこれからだって時に・・・無慈悲にあんな殺され方をされたんじゃ・・・だから、俺は決めたんです・・・もし、この親子が生きてさえすれば、ゆくゆくは親子だけじゃない、俺たちにとっても何かしら明るい未来が差し込むんじゃないかって・・・」
王「フフ、お主のそう言う情に熱いトコロが長所だな」
大「で、まずはさっきのふぇありぃとらんぷ・・・しもん殿を訪ねたのだな?」
さ「ええ・・・その通りです」
王「なるほど・・・」
さ「もう時効だよな・・・?――あのじ〜さんはやはりタダモノじゃありませんでした――俺は半信半疑で訪ねて、ある術を使えるか聞きました」
大「術?」
さ「――そしたら、“誰にも口外しないと言う条件付き”で―――で、その不思議な呪術を習いました――・・・仮にバレた時のために、未来に行って将来嫁さんが出来ているか確かめられるか?と言う“てい”で」
王「未来に・・・?」
さ「もちろん、そんなくだらない目的のために習ったんじゃありません、本当の目的は“まだ生きている頃のはーつをここに連れて行く”こと――」
大「と、と言うことはまさか・・・」
さ「そう・・・過去の世界へ行くことです」
大「そ、そんな魔法は聞いたことが無いぞ」
さ「魔法じゃないんです、呪術です――よくは分からないんですが、我々が使える魔法というカテゴリーとはまったく違う世界・・・どう言えばいいのかな・・・?」
大「呪術の記載なんて博物館には書かれていないはず・・・隠していたとでも言うのか? ダイヤのふぇありぃとらんぷは」
さ「分かりませんよ、あの時はそんなことを問い質す余裕は無かったし」
王「とにかくそれで突破口は開かれたわけだ」
さ「ええ、ですが呪術と言うのがネックでした・・・最初に術そのものの概要、詠唱から発動までの流れを覚え、コントロールするまでに3年・・・でやっとのことで過去に行けたんです、半ガムシャラな場面があったんですが運よく成功しました――で、その頃付いた時代は確か、なぽれが蒼き星に行ったばかりだったと思います、ですから娘が生まれてまだ間もない頃だったと・・・」
王「う、うむ・・・」
さ「はーつに会ってちゃんと話しましたよ・・・でも最初はまともに話を聞いてくれませんでした・・・ま、そりゃあそうでしょうね、いきなり“このままでは殺される”とか言った日にゃあ・・・ねぇ?」
王「・・・・・・」
さ「その時は伝えるべき事実はすべて伝えてここに戻りましたが・・・」
王「うむ、それで?」
さ「この術のもっとも厄介なところは、その世界で歴史を変えたとしても・・・それ以前に、私の介入だけで今俺たちが居るこの世界の歴史に何らかの変化が生じるのだろうか・・・と言う懸念でした」
大「・・・・・・出来なかった・・・のだな?」
さ「ええ、残念ながら・・・でなければあなたがたは・・・この時代のみんなは“はーつ親子は無慈悲に殺された”と認識していないはず・・・直接掛け合った俺はどうなるかまでは分かりませんがね」
大「・・・・・・」
さ「でもあんな歴史なら寧ろ変えてしまった方がいいと思いました・・・だから俺は敢えて彼女らを連れていくシフトを変えずに続けました」
王「で、2回目は・・・?」
さ「ええ、それから7年も掛かってしまいましたが、やっとのことで行くことができました・・・ひとつ補足すると、この時代の流れと過去・未来の流れは平行に流れている・・・つまり・・・説明しにくいけど、一度行った時代と言うのは感覚的に記憶出来てしまえるもので、2回目に行った時も1回目からちゃんと7年が経っていたということです」
王「うむ、言わんとしたことは理解した・・・で、連れて来れたのか?」
さ「危なかったですよ・・・今まさにふたりとも手を掛けられてしまうと言う場面でしたから」
大「おぉ・・・!」
さ「一歩遅かったら、10年掛かった俺の目的もすべてパーでしたからね、そりゃあ死にもの狂いでヤツらの手から逃れました」
王「・・・おぉ・・・」
大「はーつ親子を殺めようとした連中はどんな感じだったのだ?」
さ「そんなの確認する余裕なんて無いですよ・・・何たって、相手は戦火を潜り抜けてきた強力な魔法遣い・・・はっきり言って自分のレベルでは魔力はもちろん、しもんのじ〜さんに教えてもらったとは言え、まだまだヒヨっ子レベルな俺じゃあ丸でヤツらには通じないですよ・・・それに、黒ずくめのローブを全身に纏っていたから姿は分かりません」
王「そうか・・・はーつは癒しや治癒などを軸に持つ、名の通り“ハート”の妖精・・・火や氷など、自然の摂理を拝借する遣い手ではないから当然太刀打ちは出来ない・・・なるほど」
さ「ですが、そのハートの権威である彼女は彼女でやはりとてつもない魔力の持ち主です、実は奴らを振り切る手前で俺は攻撃を受けてしまって、利き腕を失ったんです」
大「何だと!?」
さ「ですがこの通り・・・! 傷跡一つ残さず彼女は私の腕を元通りにしてくれました・・・しかし・・・!」



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