★だい20わ:ふぇありぃとらんぷのかこ〜あいときせき〜★


度重なるいじめを受け続けたはーつは、肉体的にも精神的にも限界に達していました。
いつもの重い足取りで家を出た先に待っていたのは、数名の悪童たちでした。
そう、学校ではなく、家の前です。

あろうことか、両親の見ている前で暴力沙汰を起こし、はーつはついに意識を失ってしまいました。

事件はたちまち学校にも行き渡り、村へ、そして国にもこの事件が耳に入りました。
この事件の収拾と、被害を受けたはーつの救済に対応したのが、“スター”と言われる現在の星際期間のパイオニアとして頭角を現したなぽれとその部下たちでした。
平和を重んじる妖精族にとって、この事件は由々しき問題と言う範疇に収まらず、社会現象にまで発展した妖精大汚点ピクシーと言う名前まで付いたのでした。


事件を起こした悪童たちはもちろん、学校、そして村の幹部たちは、異例ともとれる国による裁判に掛けられ、いままで誰ひとり受けたことのない、妖精族にとって最も重い罪である“魔法封印”を受けました。
魔法封印とは、魔法の悪用防止のために、国に仕える一部の優秀な魔道士だけが使える高等魔法で、受けた妖精は死ぬまで一切の魔力を封じられてしまうというもの。
妖精にとって手足の補助を有する手段を絶たれることになる。と言うことは、言わば手足を失うのと同じ感覚です。
被告たちの大半は罪を重く受け止めたのですが、
悪童たちの一部は最後まで抵抗したそうです。
ですが覆ることは無く、残りの余生は償いと共に歩むことになるのでした。
またその後の話で、事件が発覚する前の彼らの目は、妖精と言うよりは、悪魔に魂を持って行かれたかのような、とにかく冷たい目をしていたとのこと。

誰かの差し金でああなったのか、
それとも彼らの意思そのものなのかは不明のままです。


はーつは一命を取り留めましたが、心の闇は計り知れないものでした。
魔法封印と似たような魔法に対する禁断症状・言語障害・そして医師から告げられた絶望的な一言が――・・・

「子供を産むことが出来なくなったかも知れません」

この言葉にはーつも両親もただ泣き崩れるしかありませんでした。
また、その事実を知ったなぽれもショックを隠せないでいました。
でもなぽれは諦めてはいませんでした。
はーつを必死で励ましていました。
少しでも彼女の力になりたい一心で。

「医師はあくまで“かも知れない・・・・・・”と言った―――と言うことは望みが無くなったわけではない」

そう説き伏せて、忙しい日々にも関わらず毎日はーつの居る診療施設に通っていました。



2年後、やっとの思いで普通の生活を取り戻したはーつの元に、卒業証書と二通の手紙が入っていました。

一通目の手紙は学校からで、内容は――・・・
・学校の廃校が決まったこと。
・事件を受け、村全体の立て直しを国に一存する
と言う短い箇条書きだけが添えられていました。

被害に対する対応のそれはもちろん、謝罪の言葉も全く記されていませんでした。

はーつはたまらず手紙と卒業証書を破り捨てました。


興奮したはーつはその勢いで残ったもう一つの手紙も破り捨てようとしましたが、封筒の右下に小さく記された丁寧な直筆に目が留まり、摘まんだ手の動きを何とか止めました。


その手紙は、なぽれからのものでした。



中身は、掻い摘んで言うと、
今後もはーつさんの為に、必要な時は全面的にバックアップします――と言った内容。
国のバックボーンももちろんでしょうが、それ以上に、なぽれ自身がはーつの力になりたいと言う気持ちの方が強く刻まれていました。

この手紙がきっかけなのかは分かりませんが、
はーつはなぽれに淡い恋心を抱くようになりました。


ほどなくして、ふたりは真剣にお付き合いを始めます。
なぽれも献身的にはーつと触れ合う中で、彼女の魅力にも留まるようになり――――

ある日、彼は思い切って告白しました。

―――――

断る理由などありません。
はーつにとっては夢のような瞬間でしたから。

ふたりの交際に伴い、なぽれの勧めではーつたち一家は、国の城下町・とらんぷたうんに移住することになりました。
はーつにとって、いままでの辛かった出来事を埋め合わせてくれるなぽれの存在は、いつしかかけがえのないものになり、それまで抱えていた様々な障害は、奇跡的に回復に向かっていくのでした。

また、なぽれははーつに魔法も教えていました。
と言っても禁断症状を緩和させる目的で簡単な魔法から。リハビリのようなものです。
でもこればかりは他の症状とは違い、平坦には行きませんでした。
しかしなぽれは諦めません。真剣に、愛情を持ってはーつに向き合っていました。
はーつもなぽれの愛情を受けながら自分を鼓舞していきました。



交際から3年。思わぬところで2つの嬉しい出来事に遭遇します。

その日もふたりで魔法のトレーニングをしていました。
失いつつあった魔法力はほんの少しずつですが、使えるようになっていきました。


その時――

彼女の周りから突然光が噴き出すように解き放たれました。
これにはなぽれも驚きました。

はーつの魔力は完全に復活したのです。
それも、何故かは分かりませんが国に仕える魔法遣いの限界レベルをはるかに超えていました。

さらに不思議なことに、ふたりの指先から目映い光が包み込み、周囲は見たこともない白くて巨大な花が咲き乱れ―――・・・・・・

ふたりの左手には指環がはめ込まれていました。
なぽれには緑色の宝石が輝き、はーつのは桃色がかった赤い光を放っていました。
ふたりはこの指環の意味が理解できず、王様に報告することにしました。

「おぉ・・・その指輪はまさしく“ふぇありぃとらんぷ”の証! お主たち、いつの間にそんな力を身に付けたと言うのだ!?」

王様も目を丸くするしかありませんでした。
この突然の奇跡がきっかけで、四大妖精の礎が始まろうとしていたのです。

更に時は経ち―――、なぽれとはーつは結婚しました。
国が取り仕切る盛大な結婚式は、たくさんの祝福を受けての幸せなひと時でした。
ただ、忘れてはならない、もっとも懸念しなければならない事があります。


そう。

“子供が出来ないかもしれないこと”


ですが、これもふたを開けてみればあっけない杞憂でした。

結婚から1年、ふたりの間に新しい命が宿ります。

「ちゃんと生まれてくれるかしら?」
「当たり前だろ、俺たちの子供だ、きっと元気に生まれてくれるさ」


あの忌まわしき事件から早や8年。
貫録が付き始めた英雄・なぽれと、思春期を乗り越え、美しく成長した母・はーつ。
そして、大切なひとり娘が元気に産声を上げました。


ふたりの新婚生活は順風満帆に見えました。
はーつの心に大きく開いた風穴は十分に埋まり、潤いを伴って美しい花が咲きそうな雰囲気さえ感じるようでした。






しかし―――その甘い生活は、長く続くことはありませんでした。。。






・・・と、会議で話したのはここまでです。
続きがあったのですが、夕方に差し掛かってしまったので、続きはまた後日―――と言うことでその日は解散しました。




さて、本当に驚くべきはここから先の話です。
昔話の続きではなく、会議のあとのことです。

すっかり長くなってしまったので、みなさんもこの続きはまた別の機会にお話ししましょう。
さすがにキリが無くなってしまいますからね。

・・・本当は、みなさんには最後までお話ししたいところなのですが、どうやらそうも行かなくなってしまいました――――







――――・・・

校「ふぅ・・・・・・」
*「おつかれさまです、校長先生、お茶いかがですか?」
校「おぉ、ありがとうございます」
*「私・・・昨日のお話を聞いて、色んな意味で考え方が変わった気がします・・・」
校「無理もありませんよ、れもんさん・・・アレを聞いて平然として居られる妖精など居ないこともね・・・」
れ「でも、なぜこのタイミングで話されたのですか?」
校「ふむ・・・それはですね・・・近いうちに、今あるこの平和な歴史も変わる予感がしたのです」
れ「変わると言いますと?」
(プルルルル――)
れ「あ、私が出ます――――お電話ありがとうございます、星際期間魔法部初等校でございます――あ、はい、只今お呼びします、少々お待ち下さいませ」
(ピッ)
れ「校長先生、国の機関本部からです」
校「本部から? また急にどうしたんでしょうねぇ?」
れ「さぁ・・・とにかく“すぐ変わってくれ”と・・・」
校「ふむ・・・」
(ピッ)
校「変わりました、校長です――あ、はい・・・え? いえ、特にこれと言ったトラブルなどは今のところ何も御座いませんが―――・・・そうですか、それは確かに聞き捨てなりませんな・・・ええ、かしこまりました、こちらも注意を促したいと思います――はい、ではこちらからは・・・まだ若い妖精ですが、当校のエキスパートをお送りさせていただきます、学校がありますのでお休みの日でも構いませんか? え、緊急? ・・・わ、分かりました、まだ学校に居るはずですのですぐ掛け合ってみます―――はい、宜しくお願いいたします、それでは――」
(ピッ)
校「ふぅ・・・れもんさん」
れ「はい」
校「忙しくなりますよ・・・!」
れ「え?」
校「まず、急ピッチで作成して欲しい通達書類があるのですが、よろしいですか?」
れ「あ、はい・・・」
校「それと、まだ授業中ですがすぐにめるてぃ先生を呼んでいただけますか?」
(ガタッ)
れ「は、はい・・・校長はどちらへ?」
校「放送室です、緊急ですが、今行っている4時限目が終わったら今日は下校時間にします」
れ「下校?」
校「急いでください!」
れ「は、はい!」




(ブロロロ――――・・・)
さ「はぁ〜あ、やっぱ休み明け初日の仕事は体にくるなぁ〜・・・俺もいよいよオッサン街道からジジィと言う名の畦道に入っちまったかなぁ・・・」
(ピピピピ――・・・)
さ「ん・・・? 会社からか?」
(ピッ)
さ「はい、さくらです、どうした?――・・・は? 国の捜査官が来てるって? 俺にか?―――――お、おう、分かった、今戻るから2〜30分ほど掛かるって伝えてくれ、ん、それじゃな」
(ピッ)
さ「・・・・・・へへ、もしやとは思ってたけど、とうとう目を付けられちまったか――やっぱりバレちまったんかな・・・?」

・・・・・・

・・・

さ「はーつ・・・俺にしてあげられるのはどうやらここまでなのかも知れねぇ・・・


――・・・ん、あれは・・・国の連中・・・?」


ザワザワザワ―――

さ「そういや、ここは前に起きた白詰草んトコから近いんだったっけな・・・と言うことは、いよいよメスが入るってぇトコロか・・・?」

ザワザワザワ―――

さ「・・・・・・いよいよ“俺たちの目的”が世間・・・いや、星中に知れ渡っちまう時が来たようだ・・・はーつよ・・・」



さ「―――行くか・・・これ以上抗ってもしゃあねぇ、この際俺は玉砕覚悟で乗り込むとするか・・・」




(ガタッ)
さ「戻ったぞ」
*「社長、おかえりなさいま―――」
*「さくら社長ですね」
さ「おう、そうだ、俺がさくらだが?」
*「王室までご同行願います」


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