★だい16わ:おかあさんのために★


き「中央図書館の奥に、この星やあたしたち妖精のこととか詳しく書かれている場所があったんだ」
ち「図書館に妖精の歴史書なんて置いてあったっけ? 確か、あれは国の博物館か何かにあったんじゃ・・・?」
き「博物館には確かに昔のこととかはデカいパネルにいっぱい並んでたさ、でも本とか紙は全く置いてなかった」
ち「へぇ、そうなんだ・・・図書館に置いてるなんて、意外と無防備なんだな」
の「本自体は割りとキレイだったわ、多分コピーしたものだろうけどね――で、そこで分かったことは・・・」
ち「うん・・・」
の「まずひとつ。この星は、分裂した2つの星のうちのひとつであると言うこと」
ち「2つに分裂?」
の「そう、じゃあ、なぜ2つに分裂してしまったのか」
(ドサッ)
ち「うわ、すごい束・・・こんなにいっぱい調べたわけ?」
(ペラッ)
ち「何これ・・・写真がボケてて何だか分からないよ」
き「図書館のコピー機が壊れててな、仕方ないからのえるの魔法でやったんだ」
ち「すごい・・・のえるっていつのまにそんな高度な魔法まで・・・こういうのも試験に含まれたりするのかな?」
の「これは今から50年くらい前の記事よ――元々は、2つに分裂する前の状態だった私たちの星、それと蒼き清浄の星・・・チキュウと呼ばれるそれがひとつに繋がっていた――」
ち「蒼き清浄の星・・・聞いたことあるぞ・・・! 確か、オイラたちよりもはるかに大型の生き物・・・ニン・・・ゲンて言ったっけ?」
の「そう、ニンゲンたちが住む星のことよ、でもここではニンゲンとは直接絡んでいない・・・関わるのは、チキュウに滞在する妖精たちよ」
ち「蒼き星に妖精って住んでんのか!?」
の「資料によればそのようね、今はどうか分からないけど・・・で、その戦争が原因で、蒼き星とこの星とのライフラインを断ち切ったの」
ち「へぇ・・・」
き「でも、戦争はそこで終わらなかった・・・」
ち「え?」
き「妖精たちの星が2つに分裂する原因になったもうひとつの戦争・・・」
(ペラッ)
ち「・・・?」
き「この真ん中にいる男の方の頭を見てみろ・・・」
ち「え・・・? このなぽれって言う妖精か?」
き「何か気付かないか?」
ち「う〜ん・・・かなり見づらいけれど、何となくこはきゅの帽子に似てるかな・・・?」
き「もう1枚」
(ペラッ)
ち「これもボケててよく見えないな・・・ん?」
の「何か気が付いた?」
ち「こはきゅのおかあさんにちょっと似てるかも・・・たぶんね」
の「そして次の写真」
(ペラッ)
ち「・・・・・・え?」
の「そういうことなのよ」
き「偶然にしては出来すぎだと思わんか?」
ち「・・・ま、まっさかぁ〜、たまたまだろ、たまたま?」




さ「国に認可を取ってもらって、誰か蒼き星に行ってもらって白詰草を取りに行くってのはどうだ?」
め「[え・・・!? でもそんな・・・国の認可だなんて、そんなのムリですよ! 私の力じゃ蒼き星になんか行けません・・・!」
さ「誰もお前さんがやれとは言ってネェぞ、掛け合ってくれそうな妖精はお前さんトコの学校には居ないのか?」
め「え・・・?」
さ「例えば、お前さんトコのリーダーでは掛け合えねぇのかい?」
め「まさか・・・校長先生!?」
さ「そゆこと」
め「でも・・・仮に取れたとしても、蒼き星に行ける魔力を持つ妖精なんて・・・」
さ「それを育成するのがお前さんの役目じゃないのか?」
め「・・・え?」
さ「お前さんは教師であるのと同時に、立派な星際機関の一員にしてプロの魔法遣いだ。どうせなら、お前さんを超えてしまう位の教え子を育てて見せろよ」
め「私を・・・超える・・・?」
さ「それこそが、教師冥利に尽きるモンだと思うがな・・・オレで言うところの、会社の後を継ぐ誰かがそのうち現れるみたいに、な」
め「・・・・・・」
さ「確信は出来ないが、アイツの病気はすぐに容態を悪化させてしまうタイプではない、もちろん早く手に入れてしまうに越したことはないが・・・良くて3年、ってトコか」
め「3年・・・」





さ「とまぁ、こんなトコだ――」
母「・・・めるてぃちゃんにも話したんですね・・・私とこはきゅの過去のこと・・・」
さ「あぁ・・・お前たちが来る前に、俺が話しといたんだ・・・スマンな・・・別に隠すつもりじゃなかったんだ・・・お前にも分かるだろう・・・俺の痴れた魔力じゃどうにもならないことを・・・」
母「いえそんな・・・いいんです・・・いづれは誰かに知れると思っていましたから・・・」
さ「俺にもっと力があれば、何とかなったかも知れない・・・仕事の合間を縫って色々と試行錯誤したが、やっぱダメだった」
母「・・・」
さ「言い忘れてたが、お前の持病に付いてもめるてぃちゃんに話しといた。いつ何があっても対処できるようにな・・・」
母「・・・・・・」
さ「国に行きゃあ優れた魔法使いが今もたくさんいる、例えひとりではムリだとしても、ふたりだったり、もっと沢山の精鋭を集めれば―――」
母「それは不可能です」
さ「なぜ?」
母「星を飛び越える魔法は空を飛ぶのとは違うんです・・・並大抵のレベルでは到底成し得ません・・・いくらここに魔法使いがたくさんいたとしても・・・それに、私は国とはかかわりたくありません・・・」
さ「なぜそう簡単に諦めようとする?」
母「だって・・・」
さ「そんなの、やってみなけりゃ分からんだろ」
母「分かります・・・!」
さ「まぁ聞けや・・・! ここの連中は見た目はのほほんとしてるが、意外と根性のあるヤツばかりだ! それにここの国は向こうとは違って融通もちゃんと利く」
母「・・・・・・」
さ「お前の気持ちも分かるが、でもこれは、お前のためにやっているんだ」
母「私は・・・」
さ「お前のためでもあり、今後のこはきゅちゃんのためでもある」
母「・・・・・・」
さ「こはきゅちゃんを見てみろ・・・! すっかりこの村に馴染んで、いつの間にかたくさんの友達が出来て、あっちに居た時と違ってとっても生き生きしている、それはお前にも分かるだろ」
母「・・・はい・・・」
さ「それにこの村もお前たちが来てから、何となくだが以前より更に活気付いている。学校のみならず、近所や商店街もな。。。それは単にお前たちが華やかだからじゃない・・・お前たちの生まれ持った力がこの村全体を突き動かしている・・・それを簡単に遮断されては困る」
母「・・・何か、私たちの魔力を利用しているような言い方ですね・・・」
さ「そうじゃない・・・お前たちはもう、この村のちゃんとした一員だってことだ」
母「・・・・・・」
さ「何度でも言うぞ・・・ここは平和で安全なんだ! 昔のことはもう忘れて、今は自分のことに専念しろ!」
母「・・・めるてぃちゃんにも以前似たような事を言われたような気がしますわ」
さ「そうなのか?」
母「・・・さくらさんに色々お話を聞けて、ホッとしましたわ・・・私、少し休みますね」
さ「ん、そっか、スマンな、長々と話し込んじゃってな」
母「いいえ・・・ありがとうございます・・・」
さ「んじゃ、そろそろ俺も帰るわ、しっかりメシ食うんだぞ、せっかくこんなに差し入れ貰ったんだしな」
母「はい・・・」
さ「お大事になっ」
(パタン―――)


さ「さぁて・・・今さら思い出したんだが、肝心なことを訊きそびれてしまったわけで・・・・・・どうしたモンだか・・・」
こ「あれ、おじさん、かえっちゃうの?」
さ「お、こはきゅちゃん、起きてたんだ・・・」
こ「ん?」
さ「おじさんは明日から仕事でな、これからは今日みたいになかなかお見舞いには行ってあげられないかも知れない、大変かもしれないけど、お母さんがゲンキになるまでは、こはきゅちゃんが看病をしてあげなくちゃならない」
こ「うん、こはきゅはだいじょーぶ! こはきゅがおかあさんのコンコンさんをなおしてあげるんだ!」
さ「そっか、そいつは頼もしいな^^」
こ「あ、おかあさんのこぉりまくらとりかえなくっちゃっ、またねっ、おじさんっ♪」
さ「うん、またな、こはきゅちゃん」
(バタン――)
さ「・・・・・・・・・」




め「[そうでしたか・・・]」
さ「あぁ、確かにあの子の指には指輪がしっかりとはめ込まれていたよ・・・まさか、あんな小っちゃい子が魔法を覚醒させてしまうとはな・・・」
め「[これもこないだの白詰草の影響なのでしょうか・・・?]」
さ「多分な――それと気がかりなのは、昼間の所業ではーつが俺たちを信じてくれるかだ・・・」
め「[でも、こればかりはお母さんの気持ち次第です、私たちや――ましてや国がどうこう言うところではありません]」
さ「まぁ、そうだがな・・・」
め「[分かりました、こはきゅちゃんのことは私たちにお任せ下さい、明日から私たちの学校は実習に入ります――たぶん、そこで少しは何かが分かってくるかも知れません、さくらさんも明日からまたお仕事なんでしょう?]」
さ「あぁ、と言っても大体事務所にいることが多いから、ヘンな話、時間はたっぷりあるんだ、オレはじっくりと白詰草の方を調べとくよ、夕べ仕入れてくれた資料、大事に使わせてもらうぜ」
め「[よろしくお願いします]」
さ「おぅ! オレも時々様子を見に行くことにするよ、めるてぃちゃんもムリだけはすんなよ」
め「[はい、ありがとうございます―――]」


さ「ふぅ・・・さて、オレはこれからどうすべきか・・・」

・・・・・・

・・・・・・


さ「これも予定調和だったとしたら、とんだ貧乏くじだ・・・と言いたいが、オレらの運命が掛かっている以上、避けては通れない・・・特に、アイツら親子にとってはもっとなハナシだ・・・!早いトコ何とかしないとな・・・!」




こ「それじゃおかあさん、お休みなさい」
母「うん、ありがとね、こはきゅ・・・ごめんね、お母さんがこんなだから、ちゃんとしてあげられなくて・・・」
こ「ん〜ん、きにしないでっ、はやくゲンキになれますよ〜にっ」
母「そうね・・・ありがと、おかあさんもがんばってコンコンさんを追い出さなくちゃね」
こ「うんっ、それじゃ、あかりけすね」
母「おやすみ、こはきゅ」
(パチン―――)

こ「ふぅ・・・あれ、にっきが・・・!」
(ポウゥゥゥゥ――――・・・)
こ「スゴイ・・・! のえるおねえちゃんのときよりずっとひかってる・・・!」


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