★だい11わ:こはきゅのしあわせすけっち★
・・・・・・
ふ「やっぱり、アタシの憶測は間違いじゃなかったかも・・・」
※
こ「(ねぇねぇ、きららおねえちゃん〜)」
き「(うん、どした?)」
こ「(ここ読んでぇ〜)」
き「(うん・・・? うわ、結構長いな・・・、んじゃ読むぞ」
こ「(うん♪)」
き「(えっと―――・・・・・・)」
――蒼き清浄の星と妖精の星との架け橋を崩す原因は未だ定かではない。
当時の兵隊長・なぽれ氏が行方を眩ますと、国や周辺地域はそれまでの戦渦が嘘の様に治まり、まるで夢でも見ていたかのように平和の空を齎したからだ。
だが、瓦礫ばかりが広がるかつての街並を見渡すと、それが夢ではないことを象徴している。
完全な復興には10年以上もの歳月を要した。
これはあくまでも一説にすぎない。
ちなみにもう一つの説が残った文献から推測される。
隊長の捜索に当たった兵士3名の件にある。
彼の消息から7年後、入隊から10年足らずで異例の出世株に伸し上がったほいすと氏と同期の隊員2名は、最前線で星の警備に当たった。
この異例の出世は、なぽれ氏とほいすと氏が兄弟であるからだと周囲から揶揄されていたが、なぽれ氏と引けを取らない魔力・知力・武術力を兼ね備えた、確固たる実力を持ち合わせていたから故の必然案であるとも言われている。
文献によると、当時復興が遅れていた北の奥地にて異常信号が発信され、調査に乗り出した。
現地付近は気象の変化が激しく、名うての兵士ですら簡単に侵入できないほどの危険地帯であった。
調査開始後、3名の連絡は一切途絶え、未だ足取りも生死も確認されていない。
――消息から10年後、ようやく北の気候も落ち着き、国が召集した探検家らによって改めて調査に乗り出すこととなった。
ある探検家のその後の話では、戦禍の爪跡は他の地域とは比較にならないほど酷く、付近の村や町などの外観はおろか、恐らく現地で犠牲となったであろう妖精たちの変わり果てた姿と思わしきそれが夥しく横たわっていた。
間もなくして、北の地は廃墟と断定された。
き「(うゎ・・・なんかイヤだな・・・って、こんなの読んで面白いか?)」
こ「(えっとね・・・あのね、このしゃしん・・・こはきゅがもっと小さいころにね、あったことがあるきがしたの、このおじちゃんに)」
き「(ん? どれよ?・・・この“なぽれ”って妖精にか?)」
こ「(うん)」
き「(まっさかぁ〜! だってこの記事、50年以上も前の記事だぜ!)」
こ「(おかあさんとこはきゅといっしょにいたようなきがする)」
き「(は? それって、まさか・・・ち――――)」
ふ「(――そろそろ帰ろうか?)」
※
ふ「・・・あの時、話を遮ってしまったのは失敗だったかな・・・」
私は、その時何故か「それ以上話を聞いてはいけない」気がしたのだ。
いや・・・正確には、「聞くのが怖くなった」と言ってもいい。
こはきゅちゃんと何の血のつながりも無い私なんかがこれ以上関わってはいけない。そんな気がしたのだ。
強いて言うなら、私がかつて国に仕える妖精として拠点にこの身を置いていた。それだけのこと。
・・・なんでだろう。
そもそも、私はなぜお城に行ったのだろう。
とらんぷたうんで商材を買い求める用事を済ませるだけのために来たはずでは・・・?
たまたまこはきゅちゃんが私の前を通ったから・・・?
まぁ、いい。
私がそこに配属されたのは、既に復興に向けて動いていた頃になってからだ。
それより過去に付いては、残された文献をかき集めたこの日記でしか知る術はない。
こはきゅちゃんたちの会話と、私の日記との内容がほぼピタリ当て嵌まっているのだ。
でも、決定的な理由とまでは至ってない。
そもそも、私がこはきゅちゃんたちのことを気に掛けたのには、訳がある。
――それは、天気だ。
私たちが住むこの地は、これから暖かい春を迎える頃だ。
とらんぷたうんよりは遥かに田舎ではあるが、雪なんて滅多に降らない、冬でも比較的暖かく住みやすいのどかな場所である。
それが彼女たちがここにやって来てからと言うもの、まるで季節を遡っていくように寒さを増している。昨日に至っては量こそ少なかったものの、一時的な大雪に見舞われた。
これが一連に繋がるとは到底思えないし、あくまで私の勘に過ぎない。
でも、敢えてその勘に掛けてみようと思った。
「あまりいい趣味とは言えないね」って言われそうだけど。
――かつての職業病が、ここに来て再発してしまったかのようだ。
こはきゅちゃんときららちゃんを誘ったその日の晩、徹夜で自分の日記を繰り返し繰り返し読み返しては反芻する作業に明け暮れていた。
でも、やっぱりダメだった。
もっと早く生まれて、星の復興前に星際機関に所属出来たなら・・・と思うと悔しくてならない。
しもんさんは残念ながら星際機関の妖精ではないし、確か、私よりも後・・・機関に所属したばかりの時に今の地に住んだはずだから、消去法で彼はハネてしまうしかない。
せめて、幅広く土地勘のある妖精に訊けば、或いは・・・
土地勘のある妖精・・・
!
・・・もしかしたら、彼なら何か知っているかも・・・
よし!
※
こ「それじゃあ、いってきまぁ〜す♪」
母「気を付けて行くのよ〜!」
こ「はぁい☆――あ、きららおねえちゃんにちゅにんくんだ!」
ち「よっ」
こ「きょう〜もおはよ〜ござい・・・きららおねえちゃん?」
き「ん〜〜・・・ お〜、・・・こはきゅか」
こ「どうしたの? げんきないねぇ?」
ち「今日は絵を描く授業があるだろ? それできららはこんなんさ」
こ「え〜、おえかきたのし〜のに〜」
き「・・・・・・」
ち「きららのことだ、“あたしはただでさえ試験を控えてる身だってのに、呑気に絵なんて描いてられっかって〜の”とか言いたいんだろ?」
き「・・・・・・」
こ「きららおねえちゃん・・・?」
ち「だいたい、試験じゃなくたって毎回絵とか工作はスルーしてんじゃ――」
(ビシッ☆)
ち「うぐ・・・」
き「一言余計だ」
ち「うぅ・・・聞いてたのか・・・にしても、こはきゅは逆にいつも以上にルンルンだね」
こ「うん☆ こはきゅ、おえかきだ〜いすきだから♪」
ち「そっか、前に先生が配った日記にも毎回絵を描いてるんだっけ――、今も描いてるの?」
こ「うん、もっちろん☆」
ち「オイラもあれから随分色々書いてるんだけど、のえるみたいにピカッと光ることはないなぁ・・・こはきゅは?」
こ「うん、こはきゅもおんなじ」
ち「きららは?」
き「・・・・・・はぁ・・・・・・」
こ「・・・・・・」
ち「・・・・・・訊くまでもないみたいだな・・・(´・ω・`)」
こ「ん"〜〜〜〜〜〜、いいてんきだぁ〜〜〜〜〜♪」
ち「今日は晴れてるし暖かいし、絶好のスケッチ日和だ、楽しんでいこうぜっ」
こ「オ〜オ〜♪ v(*^O^*)ノ」
******
め「はい、みなさん揃いましたね? それではこれからこのバスに乗ります、忘れ物はありませんか?」
A「はぁ〜い!!」
め「それでは出発しましょう!」
(ブロロロロ――――)
こ「足がつかないやぁ」
の「ふふ♪ このバス、みんな大人サイズの席だものね、こはきゅちゃんじゃちょっと高いんじゃないかな?」
ち「う"〜〜〜〜ん"・・・!」
こ「ん? ちゅにんくん、どうしたの?」
ち「クソ・・・オイラも・・・足が・・・付かない・・・!」
こ「あれ? でものえるおねえちゃんはついてるよ?」
の「うん、まぁでもギリギリだよ」
こ「あれ? のえるおねえちゃんのほうがちゅにんくんよりしんちょ〜たかかったっけ?」
ち「(Σ グサッ)」
の「・・・・・・こ、こはきゅちゃん・・・この話はもうここまでにしてあげよ・・・?」
ち「・・・・・・」
こ「??」
の「ちゅ、ちゅにんくん、大丈夫だよ、きっとこれから伸びるから大丈夫よっ!」
ち「・・・・・・改まって言われるとすごく悲しいんですけど・・・(´・ω・`)」
こ「きららおねえちゃんは?」
ち「もうヤメテクレぇぇぇぇ〜〜〜〜(;TДT)」
こ「あ、スゴイ! かかとまでちゃんとついてるっ!」
ち「バタンキュー・・・。。」
の「・・・子供って、残酷ね・・・」
き「・・・・・・」
こ「きららおねえちゃん・・・?」
き「・・・・・・」
母「([・・・こはきゅたちに何を見せようとしてるんですか?])」
ふ「(え? だから、お店の資材を――)」
母「([答えて頂けますか?])」
ふ「(お母さん・・・何か変に勘繰っているようですけど、私も含めてこの村は他のどの地域よりも平和を愛する村なんです。めるてぃちゃんか、他の妖精たちから聞いてませんでしたか?)」
き「(――調査開始後、3名の連絡は一切途絶え、未だ足取りも生死も確認されていない―――・・・・・・なぁ、こはきゅ・・・こんなの読んで面白いか?)」
こ「(うん・・・あのね、このしゃしん・・・こはきゅがもっと小さいころにね、あったことがあるきがしたの、このおじちゃんに)」
き「(これって・・・なぽれって妖精にか?)」
こ「(うん)」
き「(まっさかぁ〜! だってこの記事、50年以上も前の記事だぜ!)」
こ「(おかあさんとこはきゅといっしょにいたようなきがする)」
き「(は? それって、まさか・・・ち――――)」
ふ「(――そろそろ帰ろうか?)」
き「父親とか言うんじゃないだろうな・・・?」
こ「きららおねえちゃんってば!」
き「ふぇ!?」
こ「ついたよ〜はやくバスおりよ〜よぉ〜」
き「あ、もう着いたのか・・・?」
こ「どぉしたの? さっきからずぅっとボンヤリさんだよっ?」
き「あ、あぁ・・・すまねぇ、何でもないんだ」
こ「だいじょ〜ぶぅ〜?」
き「ん、行こうぜっ」
の「・・・・・・」
******
め「はい、全員いますね? それではこれからスケッチを始めます。題材は自由です、みなさん思い思いに描いてみましょう。ただし、あまり遠くまで行って迷子にならないように注意して下さいね、集合はここと同じ、今から1時間後です、――それでは始めてくださいっ!」
の「きらら、一緒に行こっ!」
き「お、おう」
ち「オイラも混ぜてくれ!」
こ「こはきゅも〜!」
の「うん、んじゃみんなで行きましょうかっ」
******
ち「あんまり遠くまでは行けないから、この辺にしとくか、ちょうどあそこに花がいっぱい並んでるし」
こ「ナイスチョイスっ! ちゅにんくんっ!」
ち「・・・チョイ・・・どこでそんな言葉覚えたんだ、こはきゅ・・・?」
こ「よいしょ・・・」
ち「そういや、今日は随分たくさんの荷物だね、何持って来たの? ――あ、もしかして・・・おやつ!?(*´Д`)」
こ「ちがうよ〜、――ジャン☆」
ち「日記帳・・・? それをどうするんだ??」
こ「こはきゅはこれにもおえかきするっ!」
ち「なるほどね・・・って、うわ何これ、凄い描いてるっ! もしかして、ホントに毎日描いてたの?」
こ「もちろんっ! だって、はやくのえるおねえちゃんみたいにキラキラひかってほしいもんっ」
ち「スゴイな、こはきゅは・・・・・・アレ、でものえるの日記が光った時はこんなにたくさん書いてたっけ・・・?」
こ「あ、あのはっぱみたいの、こはきゅと同じいろだっ!」
ち「どれ・・・? あ、四葉のクローバーだ!! スゴイ、よく見つけたね!?」
こ「くろーばーって、きららおねえちゃんのアイスやさんにあった“クローバーあじ”のアレ?」
ち「そ! クローバーは“幸せのシンボル”なんだよ」
こ「そっか、だからきららおねえちゃんも“しあわせのおやつ”っていってたんだ!」
ち「へへ、こはきゅの題材は決まりかな?」
こ「うん♪ よぉし・・・こはきゅのかみのいろだっ☆」
******
の「ねぇ、きらら・・・描きながらでいいから、私の質問に答えてくれる?」
き「ん? ・・・あぁ・・・」
の「・・・昨日から何かあったの?」
き「え?」
の「今朝からずっとヘンよ、きらら」
き「え・・・? そっか・・・?」
の「・・・・・・こはきゅちゃんのこと?」
き「え・・・? なんでこはきゅが――」
の「隠してもダメ、と言うかおもいっきり顔に出てる」
き「・・・どういうこったよ」
の「どうもこうもないわよ、きららはあの状態だから気付かなかったかも知れないけど、さっきバスの中でこはきゅちゃんが話してたのを聞いてたの、“きららおねえちゃん、きのうのほうかごからなんかゲンキがない”って」
き「・・・そんなこと言ってたのか、こはきゅのヤツ・・・」
の「約束する、他の子には言わないから、親友として私にちゃんと話して」
き「のえる・・・」
の「これまできららには色んなことで助けてもらったもの、お返しとかそんなつもりじゃないけど、そんなぼんやりしているきららを見てられないわ」
き「・・・・・・分かった・・・ちゃんと話すよ・・・」
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