★だい10わ:こはきゅととらんぷたうん★


(ガチャ――)
ふ「さ、ここがアタシたち妖精の中心都市だ!」
こ「すごぉ〜い♪ くびがいたくなりそうなくらいたかぁい!」
き「ここがアタシたち妖精たちの中心・・・」
ふ「ホレホレあんたたちぃ〜、行くよっ!」
こ「はぁい☆」
き「・・・・・・」

******

こ「すごいねぇ〜こはきゅ、こんなにすっごいトコはじめてだよぉ!」
ふ「そうかい? こはきゅちゃんは何でも初めてなんだねぇ」
こ「うん! すっごくキレイ!」
き「・・・妖精の星とは思えないな・・・」
こ「ねぇねぇ〜ふらわおばさん、ここでなにをするんだっけ??」
ふ「アタシはまずこの先にある市場でお花の種を仕入れに行くの。お店にいっぱい並んでいるのは全部ここで種を買って、お店で育てているんだよ」
こ「村ではたねはかえないの?」
ふ「村にある花を売ってもしょうがないじゃない、どこでも見られるんだから。それにここの種はそこいらじゃ手に入らない特別製なんだよ、こはきゅちゃんはいつも通学の時にアタシのお店通ってるでしょ? あの花たちをそこら辺の道端で見ることなんてないよね?」
こ「あ、そっかぁ〜――おばさんチのおはなさんたち、とってもキレイだもんねぇ〜」
ふ「アリガト☆」
こ「ふ〜ん・・・あれ?」
ふ「ん、どした?」
こ「こはきゅたち、いまおしろにむかっているの? なかなかちかづかないよねぇ」
き「そもそも、あたしたち一般の妖精がカンタンにお城なんかに入れるのか?」
ふ「お城はまだ後っ! まずは種を仕入れてからさ! 売り切れちゃったら困るからね」
こ「はやいものがち?」
ふ「そ、早い者勝ち!」
こ「あ、おっきいしょうてんがいだぁ!」
ふ「城下町の“とらんぷたうん”だ」
き「と、とらんぷたうん!」
こ「?」
ふ「きららちゃんは勿論知ってるよね? 何たって国の真下にあるこの星最大の街だもん、アタシたちの村なんかとは大違いなのは言うまでもないわよね」
き「うわぁ・・・とらんぷたうんってここにあったんだぁ・・・! あたし、一度ここでショッピングしてみたかったんだぁ・・・! アレ、あたしそう言えばお財布持って来てたっけ・・・!?」
ふ「いいよいいよ、今日は無理言って付き合ってくれたんだもの、好きなの買って上げる! あ、でもあまり高いのはダメだよ」
き「え・・・マジ、いいの!?」
ふ「見ての通り、おばさんは太っ腹だからね〜♪」
(ポンポンっ☆)
ふ「よし――アンタたち、それぞれ3つまで選びなっ」
き「3つも!?」
こ「こはきゅもいいの?」
ふ「もちろん☆」
き「うは☆ やった!!アリガトおばさん、よ〜し! 行こうぜ、こはきゅ!」
こ「うん♪」
ふ「んじゃ、30分ぐらいしたらまたこの辺歩いてるから、それまでに決めちゃいなよ!」
き「ラジャー!」
こ「らじゃぁ〜♪」
(タッタッタ――)
ふ「・・・んふふ、何だかんだ言って、きららちゃんもまだまだお姫様ってトコかしらね〜♪―――さて、ちゃっちゃと種を仕入れてしまいますかな」




し「おや、今からお買い物かい?」
母「あ、こんにちは――ええ、今日はちょっと遅くなってしまいましたので・・・しもんさんもこれからお出掛けですか?」
し「わしは日課のお散歩じゃ」
母「この寒いのに、大丈夫ですか?」
し「若いモンにはまだまだ負けん! わしを侮っては困る!」
母「はぁ・・・あ、あのもし宜しければちょっとお伺いしたいのですが・・・」
し「うん、どうしたんじゃ?」
母「あの・・・ここに住んでいる皆さんって、星際機関とか言うグループに所属していると聞いたのですが・・・」
し「あ〜、“スター”かぁ、懐かしいのぉ」
母「スター?」
し「星際機関のコードネームじゃよ、この村を立て直したチームの最前線をスターと呼んでいたんじゃよ」
母「村を立て直した・・・?」
し「今は主にこはきゅちゃんたちが通っている学校を中心に活動しているんじゃけど、昔は学校を立て直す以前に村自体が荒れ果てておってのぉ、国が立ち上がってこの村の復旧に務めてくれたんじゃよ」
母「・・・」
し「大変じゃったよ、ここだけじゃないが、今と違って平和とは無縁の最中じゃったからのぉ」
母「・・・争いでも起こってたんですか?」
し「うむ、まぁ掻い摘んで言えばそういうことじゃ」
母「・・・・・・」
し「んで、そのスターがどうかしたんかいの?」
母「・・・あ、いえ・・・何でもありません・・・!」
し「まぁ、お前さんたちもこの村に慣れ初めてきたとは言え、まだ日も浅い。でも今は見ての通りのんびりした方じゃ。これからゆっくり馴染んでいけばいい」
母「・・・はぁ・・・。」
し「ん? そう言えば、きょうはこはきゅちゃんは一緒じゃないんかの?」
母「え、ええ・・・今日はお友達と・・・」
し「お〜そうかそうか、こはきゅちゃんは学校にもすっかり馴染んだのかな?」
母「ええ・・・はい、おかげさまで・・・」
し「そうかいそうかい、それは何よりじゃ♪ それじゃ、またのぉ」
母「あ・・・はい・・・」

母「・・・・・・」

母「・・・昔は荒れ果ててた・・・あの人・・・まさか・・・」




き「あ♪ これ、のえるがこないだ話してたヤツだ!」
こ「わぁ〜キレイ〜♪」
き「このみ屋にもあったんだけど、すぐ売り切れちゃったんだよ、やっぱデカいトコだと品揃えが違うなぁ♪」
こ「3つまでかっていいんだったよね、こはきゅ、コレにしよっと♪」
き「さっきはおばさんに随分なこと言っちゃったケド、訂正しなくちゃいけないかなぁ〜♪」
こ「かなぁ〜♪」
き「思わぬ所で大収穫だよぉ〜・・・って悠長にくっちゃべってる場合じゃないな、そろそろ30分だ」
こ「もうそんなじかん?」
ふ「お〜いたいた、決まったか〜子供たち?」
こ「はい☆」
き「ホントに3つも選んじゃっていいの?」
ふ「おばさんに二言はありません!」

******

*「ありがとうございました――」
こ「わ〜い、ありがと〜ふらわおばさん♪」
き「ゴチになりましたっ!」
ふ「んふふ〜、きららちゃんもゲンキが出てきたようで何より何より、んでもっておばさんも今日は大収穫ぅ〜――じゃんっ!」
き「え、これって種・・・? へぇ〜・・・まるで宝石みたいだ・・・?」
こ「すごぉい、キラキラひかってるぅ〜・・・」
ふ「このキラキラがやがて、お店にあるような花に育ってくんだ」
き「なるほど・・・そこらに生えてないわけだわ」
ふ「さて、おばさんの用事も済ませたところで本題のお城に向かうとしますか!」
こ「おーおー♪」
き「でも、あたしたちみたいなのがホントに入れるの?」
ふ「昔は色々あって出入りは厳しかったけど、今はお城とは名ばかりのお飾りみたいなモンだからね、あんまりヘンな物さえ持ってない限りは誰でも自由に出入りできるんだ」
き「なぁんだ、そっかぁ・・・車ン中で散々話を引っぱるから何かあるんじゃないかと思ってたよ」
ふ「あるよ」
き「え?」
ふ「今日は、特にアンタにとって非常にいい勉強になる、そしてこはきゅちゃんのコト、もっと知りたいんだろ?」
き「え・・・あぁ、うん・・・でもお城に来たら何か分かるのか? こはきゅのこと」
ふ「そのために、用意しておいたんだ」
(スッ)
き「何それ? 本?」
ふ「アタシが書いた日記だ」
き「日記?」
ふ「アタシはこう見えても、若い頃はこの星の歴史をまとめるお仕事をしていたんだ」
き「歴史?」
ふ「そう、女だったこともあってさすがに最前線に立っていたわけじゃないけど、過去の出来事を本にまとめることで二度と同じ過ちを繰り返さないようにきちんと記録しなさいって言われてたんだ」
き「そうなんだ・・・」
ふ「逆に訊くけど、アンタたちは学校でそういうのは習ってないのかい?」
き「うん・・・普通に勉強と魔法だけ・・・」
ふ「そっか・・・ま、それだけ平和になったってことか」
こ「ついたぁぁぁ♪」
ふ「入ろうっか」
き「う、うん・・・」

******

ふ「あんまり大っきい声出したら監視の妖精に怒られちゃうから、少し静かにね」
こ「おくちチャック?」
ふ「ん〜・・・半分だけ♪」
こ「はんぶんだけチャックっ」
ふ「そこ右に入って」
こ「みぎ?」
ふ「この先は博物館になってるんだ」
き「え、お城・・・なんだよね?」
ふ「もちろん、王様や軍人たちもここにいるけど、この星の歴史や展示の物はすべて国が管理してるんだ、もちろん無料で一般公開されている」
き「へ〜、気前いいんだなぁ―――で、さっきおばさんが持ってた日記と何か関係あるわけ?」
ふ「アタシの日記は、誰にも書き換えられたりしないように強力な魔法を掛けている。アタシのように書物を管理する妖精として、この技は必要不可欠なんだ」
き「誰かに破かれたり、塗り潰されたりしないように?」
ふ「それもあるけど・・・魔法で中身を書き換えようとする愉快犯ももしかしたら居ないとは限らないだろ?」
き「ふ〜ん、なるほどね・・・だったら、ここに並べてるのもその魔法が掛けられてるんだ」
ふ「いや、多分そこまで警戒はしてないと思う。今はせいぜいショーケースを施錠している程度だ―――だからこそ、確かめたかったんだ」
(チラッ)
き「――こはきゅのこと?」
こ「うわぁ・・・むずかしい字がいっぱいならんでる・・・なんてかいてあるんだろ? ねぇねぇ、きららおねえちゃん〜」
き「うん、どした?」
こ「ここ読んでぇ〜」
き「うん・・・? うわ、結構長いな・・・」
こ「(ワクワク☆)」
き「(何でここに食いついたんだか・・・)ま、いっか、んじゃ読むぞ」
こ「うん♪」
き「えっと―――」



ふ「――そろそろ帰ろうか?」
き「え、もう夜になった?」
(グゥゥゥゥ・・・)
ふ「・・・?」
き「・・・?」
こ「・・・えへへ♪ こはきゅでした♪」
ふ「お母さんも心配してるだろうし、また今度連れてってあげるからさ」
き「は〜い」
こ「おなかすいたぁ〜――あ、ゆきやんでる!」
ふ「うん、思ったほど積もってないし、帰りは少し早く着けるかな?」
き「う・・・こはきゅの腹の音聞いたら、あたしもお腹減ってきたわ・・・」
ふ「んじゃ、とっとと引き上げるとしますか!」
こ「お〜お〜♪」


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