★だい6わ:こはきゅとまほうのにっき★


4月17日:曇のち雨


こはきゅちゃんがこの学校にやってきて、早いもので1週間。
数多い転校生達が入り混じったこのクラスの中でも、一番寒さに強い子。

素直で優しい子。

ううん、それだけじゃない・・・。
まだよくは分からないけど、彼女には特別な何かを感じる。
それは決してイヤな意味ではない。

寧ろ、私たちが長年求めている夢の欠片を
ひょっとしたら、彼女が握っているんじゃないか・・・
根拠は無いけれど、そう思うの。

多分、私の痴れた思惑に過ぎないけれどね。


それはそうと、いつもお菓子がガールフレンドのちゅにんくん。
今日は彼がほんのすこしだけ大人な一面を垣間見ることが出来た。
“女の第六感”ってヤツかな?

こはきゅちゃんの前では、いつしかお菓子が離れていっているのが分かる。
何だか、昔の私に似たような光景だ。

そう言えば、先輩は今頃どうしているかな?
私も今では国に仕えるお仕事をしているけれど、
彼はもっともっと身近な所に居る。

たくましくなっただろうな。
ケガや病気・・・してないよね。

なかなか休みが取れないのだろうか。
最近、めっきり顔を見なくなってしまった。


―――逢いたいなぁ。

・・・ダメダメ!

ここで無意味に挫けちゃダメ!

私はいっぱしの教師なんだ!

子供たちを守る立場なんだ!

国に仕える立場なんだ!

折れちゃダメだ!


しっかりしろ、私!




め「・・・ふぅ」

*「めるてぃ先生、おそうじ終わりましたぁ〜」
め「ごくろうさま、ちゅにんくん・・・あら?」
ち「ん? どしたの、先生?」
め「ちゅにんくん・・・少し、背が伸びた?」
ち「オイラは、先生がちょっとだけ縮んで見えたかも」
め「ウフフ・・・って、何でやねん」
ち「あ、先生もツッコミ入れるんだ」
め「私はまだまだ若いですよぉ〜だっ」
ち「うん、だってオイラには先生って言うより、お姉ちゃんみたいな感じだもん」
め「あらあら? 君もそんなこと言うようになったんだ」
ち「でも、きららの背を追い越すまではまだまだかも」
め「へ〜・・・」
ち「ん?」
め「ねぇねぇ、ちょっと訊いてもいい?」
ち「ん、何?」
め「ちゅにんくん・・・最近、好きな子でも出来た?」
ち「な、な、な、何言ってんだよっ、いきなり!!」
め「ウフフ、やっぱりね♪ 別におかしい事じゃないのよ。何だか最近ちゅにんくんが少しずつ大人っぽく、そしてたくましくなっていったなぁ〜と思ってね」
ち「お、お世辞なんか言ったってお菓子はあげないぞ・・・!」
め「ウフフ、違うわよ♪ 恋は決して恥ずかしいことじゃないの。年の差だろうが何だろうがそんなのは関係ない。うんといっぱい恋をしなさい、そしていつだって女の子を優しく守ってあげられるちゅにんくんになって! いい?」
ち「・・・・・・う、うん・・・」
め「? 何?」
ち「お、大人の発言だなぁ・・・と思って」
め「・・・ぷっ」
ち「・・・くく・・・」
めち「ハハハハハ・・・!」

こ「あ〜いたいた、ちゅにんくん!」
ち「ハ・・・あ、こはきゅ・・・!」
め「あら、こはきゅちゃんもごくろうさま」
こ「きららおねえちゃんが、はやくこないとおいていっちゃうぞぉ〜って! さぁ、はやくいこうよ!」
ち「お、おう・・・」
こ「ん〜〜〜? ちゅにんくん、おかおがあかいよ? おねつ?」
ち「い、いや、そうじゃない・・・い、行こう・・・!」
こ「うん、だ〜〜〜っしゅっっ!!、せんせもまたあしたね〜〜〜!!」
ち「それじゃ先生、また」
め「気をつけてね〜♪」

め「なるほど、ふぅ〜ん・・・そうかそうか・・・お菓子が恋人かと思ったちゅにんくんもいよいよ青春時代に突入ですかぁ・・・いいわねぇ」




*「おつかれさま、めるてぃ先生」
め「あ、校長先生、おつかれさまです」
校「調子はいかがかね?」
め「えぇ、とっても☆」
校「それは何より何より、こないだ君のクラスにやってきた・・・ん〜と、こはきゅちゃん、かな? 彼女の様子はどうです?」
め「はい、最初はやはり緊張気味でしたけど、今は仲間ともすっかり打ち解けて、毎日笑顔を見せてくれています」
校「ふむ、それはよかった」
め「・・・あの、校長先生・・・」
校「ん、何かね?」
め「私・・・前にも言ったかも知れませんけど・・・やっぱり私は・・・本当は、こういう事に魔法を使いたくはないんです・・・」
校「ふむ・・・めるてぃ先生だけではありませんよ。“いたいけな子供たちの心をマインドコントロールしてしまうようで不本意だ”とね・・・でも、些か荒療治だが、“これ以上子供たちの心が蝕まれたまま大人になってしまう前に、正しい道へ導いてあげること”それが国を挙げて設けられた星際機関である・・・お忘れではありませんね、めるてぃ先生?」
め「はい・・・」
校「あなたたちが子供たちを、ひいてはこれからの国を、星を守る役目。今だけです、それに耐えるのは。今にきっとこんな魔法に頼らなくとも、必ず本物の夢の国・夢の星として実現できます」
め「・・・・・・はい」
校「だから先生、自信を持ちなさい・・・! あなたたちは、決して間違ったことはしていない」

校「それにしても、今更だが王様も大胆なことを仰るよ・・・これがまたすべてプラスに運ぶとは、私とてイメージ出来なかったですよ・・・例えば、先生が今書いている日課が示しているようにね・・・♪」
め「え・・・? って、ちょっと校長先生!!」
校「ハッハッハ、すまないすまないっ」
め「もぅ・・・校長先生ったら・・・!」
校「でもいい傾向です。ここにいる子供たちも、今ここにある幸せな学校生活を・・・いい思い出をいつまでも大切にすることが出来れば、きっと将来は素晴らしい大人になれることでしょう―――それにしても、これからどんどん暖かくなる時期と言うのに一向に寒いままだ・・・めるてぃ先生もあまり遅くならないうちにゆっくりお休みなさい、明日も授業はめじろ押しですよ」
め「はいっ」
校「では、お先に」
め「おつかれさまです」

め「・・・・・・」

め「・・・いい思い出を、いつまでも大切に・・・」

め「・・・」

め「・・・! そうだ!」

*:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*


キーンコーンカーンコーン――――
ガラガラガラ――
ち「うぅ〜寒かった・・・!」
こ「おはよ、ちゅにんくん♪」
ち「おは・・・」
き「お、やっと来たか寝ぼすけめ、める姉もうすぐ来ちゃうゾ」
の「コート着てこなかったの?」
ち「重たいし、着るのメンドくさいからそのままで来た」
き「バッカだなぁ〜カゼひくぞ」
ち「でも教室はあったかいからまだいいさ」
の「あ、そう言えばこはきゅちゃんもコートなしだよね? 寒くないの?」
こ「うん、こはきゅはへーき!」
の「タフだねぇ〜こはきゅちゃんって」

ガラガラガラ――
め「はい、みなさん席に着いて下さい〜」
*「(あれ、先生、何たくさん持ってんだ・・・?)」
*「(さぁ・・・?)」
め「はい、では今日の日直さん、お願いします〜」
*「きり〜つ!――きをつけ――れい!」
全「今日もおはようございます!!」
め「はい、今日もみなさんおはようございます・・・んしょっと・・・!」

ドサッ!!

き「え・・・!」
め「んっしょ・・・!」

ドサドサ!!

こ「わぁ〜・・・いっぱい・・・」
き「その教科書みたいな束はまさか・・・めるね・・・じゃなくて、センセ・・・!」
の「宿題・・・とか?」
め「んふふ〜♪ 宿題の方がいい?」
全「(フルフルフル!!!!)」
め「なぁんてね、ちょっと違います」
き「?」
め「突然ですが、今までみなさんに出して貰った宿題の量よりは、これからはうんと少なめにしておきます」
き「やった、マジ!?」
め「うん、マジ。で、まずはこのノートを1冊ずつ配りますから、廻してくださいね」




こ「すごくキレイ・・・それにいい匂い・・・♪」
ち「ペンまで付いてる・・・ちょっとチョコみたいな色でおいしそう・・・(´¬`*)」
き「何にも書いてない・・・ノートか、これ?」
の「スゴイよ、これ・・・表紙は全部皮製か何かじゃない?・・・高そう・・・」
め「はい、全員にまわりましたか?」
全「はぁい」
め「さて、宿題が減る代わりに――みなさんにはこの魔法のノートに日記を書いてもらいます」
き「魔法のノート?」
め「そう、このノートは普通のノートじゃありません。その日あったイイこと、イヤなこと、みんなそれぞれきっとあることと思います。内容は何でもいいです、毎日でなくてもいいです、無理のない程度に、でも出来るだけたくさん書いてみましょう。」
こ「しつもんで〜す!」
め「はいどうぞ、こはきゅちゃん」
こ「これにおえかきしてもいいですかぁ?」
き「オイオイこはきゅ、日記だぞ・・・絵なんて」
め「もちろん、絵日記にしても急な時のメモ代わりにしてもオーケーです♪」
こ「わぁい☆」
き「メモって・・・そゆのもアリなんだ」
め「とにかく書けば書くほど、みなさんにきっといいことが起きるノートです。宿題と言うよりは、みなさんにちょっとしたプレゼントってトコですね☆」
の「先生、これって提出とかあるんですか?」
め「いいえ、提出はありません、今日持って帰ったらまた学校に持ってくる必要はありません。ただし、あまり長い期間サボっちゃうといいことは起きなくなっちゃうかも知れませんので、それだけは知っておいてくださいね」
全「は〜い」




き「魔法のノートねぇ・・・」
ち「オイラ、今日寝る前にちょっと書いてみようかなぁ」
こ「こはきゅもかく!」
ち「新しいお菓子のレシピとか書いてもいいのかなぁ?」
の「何でもいいからとにかく書けって言ってたけど、そう言われると逆に何書いていいんだか迷っちゃうよね〜」
こ「これにい――っぱいおえかきしよっとっ!」
ち「こはきゅは絵を描くのが好きなの?」
こ「うん、だぁいすき(*^∀^*)」
き「にしても、唐突すぎないか・・・? 急に日記を書けなんてさぁ」
の「だよね〜」
ち「ま、書いてからのお楽しみってことにしようや」
の「そだね」




こ「おかあさん、ただいまぁ〜」
母「おかえりなさい、こはきゅ――あら? 今日は随分とたくさんの宿題ね」
こ「しゅくだいじゃないよっ、まほ〜のにっき♪」
母「?」
こ「♪なにかこうかなぁ〜ランランラン〜♪」

母「・・・・・・――よかった、毎日楽しそうで・・・」




4がつ17にち:くもり のち あめ


めるてぃせんせいが、あさみんなにくばったこの1さつのノート。
あたらしくて、いいにおいのする、まっしろでなにもかいてないノート。

きょうからこはきゅのたからもの!

まいにちいっぱいおえかきするってきめた!
なにをかこうかな?
・・・う〜ん、やっぱりまよっちゃうなぁ。

あ、でもそのまえにクレヨンがおうちにないよぉ。
あした、おかあさんにかってもらおう。
かってもらえるように、いっぱいおてつだいしなくちゃ!

クレヨンをかってもらったら、こはきゅのにっきはほんとうのスタートだ!



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