★だい4わ:めるてぃのおしごと★
*「たちばな、只今戻りました!」
*「同じくつりばな、只今戻りました!」
王「ご苦労であった――はて、ほいすとはどうした?」
た「は、ほいすと様からは先ほど連絡が来まして、もう1ヶ所だけ見回ってから戻るとのことで、我々はこちらの通信の旨を伝えた上で先に帰還いたしました」
つ「・・・(オイオイ、そんなんで理由になるのかよ・・・)」
た「それで我々からも報告が・・・!」
王「うむ・・・だが、お主たちもきっと感付いている事であろう」
つ「(あれ、ノーリアクションかよ・・・!)」
た「は、やはり、例の波動でしょうか・・・!?」
王「うむ・・・そうなのだ・・・ここからはかなり遠い位置にあるようだが、何か分かったか?」
た「いえ、我々の位置からはほんの一瞬だけでしたので、はっきりとは分かりかねますが・・・ただ少なくても、蒼き清浄の星からの方向ではないことだけは・・・」
王「やはりそうか・・・・・・間違いない、この星から出ている波動のようだな」
た「いかがなさいますか・・・?」
王「少々遠いだろうが、明日はそこに向かってもらおう。危険区域に指定されている場合もあるかも知れぬ、必ず3人で調査するのだ」
たつ「了解いたしました」
王「ご苦労、今日はもう休むがよい」
たつ「はっ!」
大「王様・・・いいのですかな・・・例のことをまだ伝えなくて・・・」
王「・・・今はまだ言うには早い・・・それにワシははっきりした理由が欲しいのだ・・・」
大「理由と申しますと・・・?」
王「うむ・・・蒼き清浄の星の何者かがこの星に侵入していることだ」
大「!・・・そんな・・・!? 魔力を持たぬ種族がどうやってこの星に入り込めると・・・!」
王「たしかに蒼き星には魔力は存在せん・・・そのかわり、“科学”と類稀なる“技術力”と言うのが彼らにはある・・・現に、度々蒼き星を抜け、目的こそ皆無だが何らかの活動を行っていると言う報告が届いておる・・・確信とまではいかんがな・・・」
大「科学・・・」
王「もしかしたら、その力を利用しワシらのような文明のある星を虱潰しに探していると考えなくはあるまいか?」
大「・・・はぁ・・・」
王「ワシらの魔力でこの星は妖精以外には目に見えないと言う定説も、既に何者かによって破られているとすれば・・・?」
大「まさか、この星の存在を知られているとでも・・・!?」
王「なぽれが蒼き星に入れたのだから、逆も有り得る・・・」
大「・・・なぽれ・・・か、連絡が途絶えてもう何年経ったことか・・・」
王「とにかく、ワシらの希望は今のところ・・・なぽれが生きていることを信じるしかあるまい・・・」
大「それにしても、ほいすとはこの時間になっても帰って来ないでどこをほっつき歩いているのだ・・・!」
王「何か収穫できるものでも見つけたのではないか?」
大「であれば、せめて通信機にでも一言入れるのが常識・・・まったく・・・!」
王「ほっほっほ、相変わらず堅いのぉ、大臣は―――とは言え、もし収穫があったとしても、悪い報告でなければいいのだが・・・」
大「・・・・・・!」
王「? どうした大臣?」
大「え? ・・・いいえ、何でもありません」
王「ふむ・・・まぁよい、今じたばたしていても何にもなりゃせん、大臣ももう休むがよい」
大「は、はい・・・それではお先に失礼致します・・・」
王「人間は、我々以上に無限の可能性を秘めているだけに残念だ・・・なぜ、悪にばかり手が染まるのだ・・・!・・・・・・しかし、あの波動は一体誰が・・・」
※
つ「ハァ〜・・・冷や冷やしたぜ・・・あんな見え透いたウソなんか吐きやがって、思い切りドヤしつけられるかと思ったわ」
た「王様はきっともうお察しだ・・・ほいすとは、我々が明日向かう所にもう行っているのだと・・・」
つ「ハ!? マジかよ、一人でか? あそこは確か危険区域に近いはずだぜ・・・ちょっとヤバいんでないの!?」
た「・・・・・・」
つ「てか、とうとうここに戻ってこなかったな、ほいすとの奴・・・未だに通信も利かねぇし」
た「ああ・・・」
つ「いくらなぽれさんの代わりに選ばれた者とは言え、アイツ最近調子に乗りすぎじゃないのか・・・!?」
た「だとすれば、あんなに必死になって自分の兄貴を気に掛けはしないんじゃないのか?」
つ「・・・はぁ、そのなぽれさんは今だ行方知らずだし、ぶりじーさんさえ生きていたら、こんなことにならなかったろうに・・・」
た「違うぞつりばな・・・それ以前に、争いと言う無意味な物をここにも持ち込んでしまった誰かがそもそもの原因だ・・・我々のやることは、その誰かを突き止めて、阻止すること、それだけだ」
つ「・・・はぁ・・・今更だけどオレ、星の警備なんて任務、引き受けなきゃよかったって思ってるよ」
た「え?」
つ「まさか、蒼き星が絡んでくるとは思ってなかったからな・・・」
た「恨むんなら、お前が向けている矛先は違うと思うぞ・・・」
つ「は? どういうこった?」
た「とりあえず、もう休もう・・・明日は早い、じゃあな」
つ「お、おう・・・!」
(バタン)
た「(王様・・・なぽれ殿は、蒼き星に居るんですね・・・・・・)」
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こ「おはよーございますっ、おかあさん♪」
母「おはよう こはきゅ、今日はいつにも増して元気ね」
こ「うん♪」
母「なぁ〜に? 何かいいことあった?」
こ「う〜ん・・・ないしょっ」
母「こはきゅ・・・後でもいいんだけど・・・お話があるの、いいかしら?」
こ「? うん、いいけど・・・なぁに?」
母「え・・・っと、・・・その・・・」
こ「・・・・・・―――がっこでしょ?」
母「・・・!」
こ「しんぱいしないで、おかあさん。こはきゅはちゃんとがっこに行くことにしたよ」
母「え・・・?」
こ「きのうね、めるてぃせんせいががっこのことをぜんぶおしえてくれたの」
母「めるてぃせん・・・・・・」
こ「こんどのがっこは、こはきゅみたいにすごくいじめられてたいへんな目にあった子たちがあつまるがっこなんだって。まほうをちゃんとつかえない子たちにもしんけんにおしえてくれるいいがっこだって。――こはきゅ、めるてぃせんせいのことしんじる。おともだちもがんばっていっぱいつくる。そしていつか、こはきゅのまほうでだれかこまっている人をたすけて上げられるようにがんばる」
母「こはきゅ・・・」
こ「だから、しんぱいしないで。こはきゅ、この村ならちゃんとこはきゅでいられる気がしたの、だからだいじょうぶ」
母「こはきゅ・・・(ギュッ)」
こ「おかあさん・・・?」
母「よかった・・・やっぱり私の娘だわ・・・こはきゅなら私みたいにならなくて済む・・・」
こ「おかあさん・・・」
母「大丈夫・・・こはきゅならきっと大丈夫・・・!」
こ「・・・おかあさん♪」
母「こはきゅ・・・」
こ「さくらおじさんがめるてぃせんせいにぜんぶおしえてくれたんだよね? だから、こはきゅたちはここにおひっこしすることができたんだって。――さくらおじさんにもありがとうって言わなくちゃだよね」
母「そうね、今度あったらちゃんとお礼を言わないといけないね」
こ「うん・・・♪」
※
め「こんにちは―」
(カチャ)
母「めるてぃちゃんね、待っていたわ」
め「すみません、本当はもう少し早く来るつもりだったんですけど」
母「構いませんわ、さぁ、どうぞ」
※
め「それで・・・今日はどうされました?」
母「どうしても昨日のお礼を言わなくちゃと思って――ありがとう、こはきゅのこと・・・」
め「あ、いえいえ私は何も・・・」
母「ううん、本当に感謝しているの、こはきゅは普段は明るく振舞っているけれど、めるてぃちゃんももしかしたら見たのかしら・・・時折人が違うように落ち込んでしまう子なの」
め「・・・でも、それはこはきゅちゃんだけではないですよね?」
母「え・・・?」
め「こはきゅちゃん・・・知っていたんですよ、ここに来る前から、お母さんの過去を」
母「そんな・・・どうやって・・・!」
め「どうやって知ったのかまでは私にも分かりません・・・でも、彼女ははっきりとこう言ってくれました、“娘までこんな残酷な目に遭わなくちゃいけないの?”って」
母「・・・こはきゅがそんな事を・・・」
め「子供だって、大人の立ち入ったことを偶然であれ、聞いてしまうことだってあります、それに今回はこはきゅちゃん自身に手を掛けてしまう子達がいたわけですから、きっと、その子達も何か事情を知った上でそういう行為に走ったと思うんです」
母「・・・・・・」
め「その子達が知っていると言う事は、多分その子達の親も、あるいは学校も知っていると言うことですよね?・・・そして、こはきゅちゃんのいじめに繋がったきっかけは・・・・・・例えば、・・・前に居らしてた村の誰かがお母さんの過去を漏らしてしまったとか・・・誰か、心当たりはありませんか?」
母「・・・いいえ、ありません・・・」
め「そうですか―――因みにゆうべ、その村の事を詳しく調べてみました」
母「はぁ・・・」
め「――あの村は、やはり普通じゃないですね」
母「え・・・?」
め「こはきゅちゃんやお母さんがそうであるように、あの村すべての人に該当するわけじゃありませんが、誰かが人為的に悪い魔法を使って、村を皮切りに、ひいては星に何らかの害を与える行為を働いたと記録に出ていました」
母「・・・」
め「でもそれは随分昔の事だそうです。そしてその事件は数年の間に国が事態を修復したとのこと・・・ただ」
母「ただ・・・?」
め「悪い魔法までを完全に消す事は出来なかった・・・そして事件を起こした張本人を特定する事もできなかった・・・」
母「・・・・・・」
め「この事件では、国に仕える魔法遣いが協力して収集に当たったのですが、それでも及ばないと言う事は、それ以上の魔力を持っているということ・・・そして、それが今もなお尾を引いているということは、張本人はまだ健在しているということ・・・」
母「そんな・・・そうですか・・・」
め「これはあくまで文献を基にした私の推測ですけどね・・・でもそれがあったとしても、なぜこはきゅちゃんやお母さんに矢面が立ってしまったのか、それだけが不可解です」
(スッ)
母「これは・・・? 名刺?」
め「改めて・・・私の名前はめるてぃ、こはきゅちゃんが明日から通う学校の教師をしています・・・でもそれは表の肩書き――名刺をご覧下さい」
母「・・・星際(せいさい)研究機関・・・?」
め「私たちが勤めている学校は、元々はさっきお話した事件を受けて、後に国が創設した特殊な学校です――今では事情があって普通の学校に通えない子たちのために、そういった悩みを持った者同士が集まり、私たち教師や国・星際機関がリードして生徒を育成するシステム・・・どちらかというと、そっちの方でイメージを持たれている方が大半を占めていますけどね」
母「と言う事は、めるてぃちゃんは・・・」
め「はい、自慢じゃ有りませんが、こう見えても国に仕えるお仕事をしています」
母「すごいわ・・・!めるてぃちゃん・・・!」
め「いえいえ、私は子供たちが好きでこのお仕事を選んだだけですから」
母「それでも・・・ありがとう、めるてぃちゃん・・・!」
め「こはきゅちゃんがこれから安心して学校に通えるように、私たちが責任を持ってバックアップします、ですからお母さんも安心してこれからをお過ごし下さい」
母「・・・・・・はい」
め「それと・・・これだけは心に決めてください」
母「え?」
め「どうか、今までの辛い出来事はもう忘れてください、こはきゅちゃんには何も罪はない・・・もちろん、お母さんにも罪はありません」
母「でも私は・・・」
め「ありません」
母「めるてぃちゃん・・・」
め「これから来る明るい未来を、こはきゅちゃんと一緒に迎えましょう」
母「・・・・・・はい!」
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