★たんぺん4:ちゅにんのべんとばこ★
凡例 / き:きらら
ち:ちゅにん
よっ、アタシはきらら! みんな元気にしてたか?
今日はアタシとは長い付き合いの友達、ちゅにんとのえるの話をこっそり教えてあげようと思ってここに来たんだ。
みんなは、きっとちゅにんはただの食いしん坊、のえるは可愛いけど何か地味なイメージを持っているかも知れない。
けどな、ふたりともアタシにとってはかけがいのない親友だ。
それをみんなにも知ってもらおうと思ってな。
あ、もちろん話せる範囲だけだからな。アタシたち妖精にもちゃんとプライバシーってのがあるのを覚えておいてくれ。
める姉のは以前どっかに流れてたらしいからそれに付いては例外ってコトでw
じゃあ、まずはブラックホール・ちゅにんの話からだ。
※
さっき、ふたりは一番長い付き合いと言ったけど、厳密に言ったらのえるが一番、ちゅにんは二番だ。
アイツは男だから、何と言うか・・・「男同士の付き合い」ってのがあるだろ? たまぁに。
のえるとはガールズトークってのがあるからさ。自然とそんな具合につまんない話からマジメな話まで時間を忘れてしまうこともある。
ま、それはいいとしてちゅにんの話な。
もうみんな知っるだろうけど、アイツは大して太ってもねぇし、背もアタシやのえるより小さいのにお菓子でも何でもすんごい喰う。
アタシたちの学校は給食じゃなくてお弁当だから、昼休みん時は尚更アイツの立ち位置が目立っちまう。
どこで見つけて買ったのやら、普通の店じゃあまず見ることはないだろうバカでかい弁当箱がカバンから出てくる。
そう言や、アイツのカバンも他の子より一回り・・・いや、もっとかなぁ、とにかく大きい。勉強道具が3割、残りの7割が食糧ってトコかな。
・・・これでも伝わりにくい?
ん〜・・・そうだなぁ・・・アタシたちとこれを読んでるみんなとはサイズそのものが違うからなぁ。
あ、そっか。
アタシたちは蒼き星の住人とは基本的に違うってトコから説明しなきゃいけねぇな。
まずアタシたち・・・よりもこはきゅで例えた方が分かりやすいかな?
洗面所にハンドソープのボトルあるだろ? あれがこはきゅ。
める姉たち大人はお風呂場のシャンプーボトルってトコだ。
で、アタシやのえるたち高学年組はその中間。
うん! これが分かりやすいだろ!
ちゅにんの弁当箱に戻るぞ。
CDケース・・・みんな持ってるよな? それを10枚積み上げてみろ。お店で売っているような厚さのヤツだぞ。そんくらいある、ヤツの弁当箱は。
ハンドソープがCD30枚を1日で最低3つは喰うんだぜ。さらに授業中以外は常にお菓子ばっか喰ってる。蒼き星のみんなにしたらどんなサイズだろうな? 想像するだけで胸やけしそうだw
あ、ウチの学校はお菓子とか飲みモンの持ち込みは基本自由なんだ!へへ、いいだろう〜♪
お菓子で思いだしたけど、アイツのカバンもまた普段からムチャクチャデカい。
勉強道具が3であとの7は確実に喰いモンってトコ・・・その内弁当箱はいくつなんだろうな?
アイツの奇抜さにはもうみんな慣れちゃってるから今じゃあ特に気にしちゃいないし、それにアイツの食欲はもちろん今に始まったこっちゃない。最初はそりゃあビックリしたけどよ。
ちゅにん家はすっごく裕福な家庭でさ、お家ももちろんジャンボだ。最近はほとんどヤツの家に行くことは無くなっちゃったけど、時々羨ましいなぁって思う時がある。
ただ、アイツの親はどんな仕事をしてんのか、忙しいのかよく知んないけど、殆ど近所との付き合いが無いらしい。そもそも家に居る時間もそんなに無いようなこともずいぶん前だけどちゅにんが言ってたような。アタシも滅多に会う事はないなぁ、まぁでもそんくらいでなきゃあんな潤った生活はまず出来ないだろう。
でもアイツがエラいと思ったのは、それを自慢するでもなく、お約束の高慢ちきな態度を取るでもなく、そこら辺の男の子と同じように、普通に接してくれるトコロだ。
もっとも、アタシたちの学校はちょっと「特別」な場所だからなのもあるけれど――ま、それに付いてはまた別の機会に話すってコトで。
で、ちゅにんの取り柄は喰うことだけじゃない。
料理―――ことお菓子に関しては天才的な腕前と言っても過言じゃない。
時々、「みんなで一緒に食べよう」ってクッキーだのケーキだのを自分で作ってクラスのみんなに振舞ってくれるんだ。・・・それもどうやってカバンに詰め込むんだ? ってツッコミは敢えてナシにしてくれ。ややこしくなるだけだから。
で、アイツのお菓子はそこらに売っているのより断然美味しい。「スイーツ・キラー」の異名を掲げてもいいと思う。将来はお菓子業界で間違いなく成功すんじゃないかな。ますます裕福になっちまうなw
更にアイツはアタシん家のソフトクリーム屋のメニューを発案してくれることもある。
ちなみにこれまで発明したのは、ほんのり甘さで“体も心も癒す”カボチャ味・同じくキウィ&ストロベリーを使った“甘酸っぱい恋の味”・お腹に優しいヨーグルトはプレーン。ダイエットにもいいらしい。
そして一番奇抜だったのがクローバー味。
これは最初、「字面はともかく・・・・・・どう考えても青臭い味しか想像出来ん!ハズレだろ・・・!」と思ったけれど、これが意外や意外に大当たり。あ、レシピはちゅにんの希望で何故か企業秘密だそうだ・・・と言うかアタシも未だに知らない。
でも、アタシが本当にちゅにんのことを話したかったのはこんなんじゃない。。。
長い前置きになっちゃってゴメンな。
こはきゅが転校するずっと前の話・・・・・・今の学校に越す前の話だ。
ちゅにんはアタシの1個年下で、たまたま同じ学校だったんだけど、そこでは丸っきり接点は無かった。前の学校は生徒もクラスもすっごく多かったから尚更だ。で、これから話すのはちゅにんの前のクラスの子から出回った話だ。
ある日、クラスの女の子がうっかりお昼のお弁当を忘れてきてしまったらしくて、隣の席の子が「みんな、おかず1個ずつ分けてやってくれ」って言おうとした時にちゅにんが、
「今日はさすがに多すぎるから、これをふたりで食べよう」
って言って例のジャンボ弁当をその子の席に持ってってあげたんだ。
その忘れてきた子とちゅにんは普段はそれほどよく話す間柄じゃあ無かったらしいんだけど、なぜかその時はちゅにんが勢いよくその子をフォローしたんだ。
ちゅにんがその頃密かに想いを寄せてた子なのか、喰い物が絡んだ事だからここぞとばかりに出てきたのか、それは知らない。
で、ヤツの勢いでクラスの空気はその瞬間ピタリと止まり―――。
それで、その子はたどたどしくちゅにんの弁当箱に口を付けたわけだが―――・・・
「何これ!すっごくおいしい!!」
「え、そ、そう?」
「・・・わ、私も一口いいかな? 見てたら美味しそうに見えてきた」
「ちゅにんくんのお母さんってスゴイ料理上手!」
「あ、いや、これはオイラが作ったんだけど・・・」
「マジ!?」
「う、うん、実はマジ」
クラスではあまり目立たない方だった当時のちゅにんにとって、この「ありふれたお弁当事件」を機にちゅにんの快進撃が始まるはずだった矢先にアイツは今の学校に引っ越していったんだ。
ちゅにんはアタシたちより一足先にここに来たんだ。
ちゅにんの料理の腕前は今でも周知の通りだ。
あれ、もしかしてオマエたちさぁ、
それが原因でちゅにんのことをでしゃばりだと思ったクラスメイトのいじめにでも遭ったと思った?
・・・違う。
実はアイツはスゴい世渡り上手なんだ。
大変だったのはもうひとりの方―――
―――おっと、時間か。
んじゃ、またこの続きはまた次回話すな!
それでは、きららでしたっ!