★たんぺん3:めるてぃけいかく★


凡例 / こ:こはきゅ  め:めるてぃ  き:きらら  ち:ちゅにん
  の:のえる  か:かんた  せ:せのり

【前置き】

私は今、試練に立たされている。

勢いで買った車に乗ってからこれまで出した4回の修理に対する出費も痛かった。
でもそれは、がんばって働いて稼げば取り返していけるもの。
それにきららちゃんに運転レベルのことを散々言われてからは、ちゃんと練習し、やっと普通のレベルまで運転は出来るようになった・・・と思う。
「思う」と言ったのは、こういうのは自分で大っぴらに言うものではないという、よく言えば「謙虚」と言うヤツだ。

でも、私のお弁当は今も少ないままでなくてはならない。
決してムダな衝動買いという名の散財をはたらいた訳ではない。
車や懐とはなんら関係の無い経緯である。

その代償なのか、単なる油断なのかは分からないが、
今私を無慈悲に取り巻いているのは、買い物がどうとか、運転がどうとかで何とかなる話ではないのだ。
言うなれば、私の体の中の懐に余計な貯蓄が出来てしまったのだ。


ではなぜこんな恥ずかしい話を世間に晒しているのか。

それは、そうでもしないとまた油断してしまうからだ。
世間に晒されていると言うプレッシャーを抱えるくらいの緊張感を持たない限り、
最悪、私はコンパスかお茶碗で丸ぁるく描かれてしまうような愚かな存在にされてしまうからだ。

ついこないだ。
夢の中で誰かが私にこうつぶやいた。



「お前は脇役だが、私の原稿の上では最早欠かすことの出来ない存在になったのだ。
 そして少なくとも、主役を差し置いてポールポジションの座を勝ち得るチャンスをも持っていると言っても過言ではない。
 だから―――――――・・・・・・・・・」



太るな。



最初は何を言っているのかさっぱり分からなかったが、最後の短いフレーズが私に求めているすべてを見事に物語ってくれた。
いや、物語なんかじゃない。現実逃避しちゃいけない。
よく考えろ。
何が原因で今置かれている現状に至ったのか。
そして、今後何をすれば私の前に立ちはだかっている壁を取り壊せられるのだろうか。

目標は500gを切ることだ。


500gだって?

そうよ、忘れてない?
私は妖精よ。
あなた達からすれば、私たちはシャンプーボトルくらいの大きさしかないの。
そして私たちが使うそのシャンプーボトルは、あなたたちからすれば消しゴムくらいの大きさで事足りちゃう存在なのよ。
まぁ消しゴムはどうでもいいとして、
私はあなたたちの手元にあるシャンプーボトルより軽くならなくちゃいけないのよ。

そしてここまであなたたちに億尾に出さず話しているのは、
自分を鼓舞するため。

そして私に課せられた試練を乗り越えるため。


私は本気よ。









こ「ん〜♪ おやさいおいしい〜♪」
ち「そういやこはきゅは好き嫌いとかはないの?」
こ「ん〜ん、こはきゅはみんなだいすきっ!」
ち「へ〜エライなぁ」
こ「すききらいはいけませんっ、ちゅにんくん、ピーマンもちゃあんとたべるのっ」
ち「・・・う・・・」
き「なぁ、見てみろよ」
の「ん、どうしたの、きらら?」
き「める姉を見てみろ」
の「なぁに・・・?――――あ・・・!」
き「分かったろ?」
の「またラスクだけだ・・・ひょっとしてまた・・・!」
き「これで5回目・・・もうぼちぼち免許取り上げた方がいいんじゃネェのか」
の「今度はどこぶつけたんだろ・・・?」
き「さぁな」
ち「ん、どうしたんだ?」
き「え、あぁ・・・ちょっとな・・・」
の「ダメよちゅにんくん、これは女の子にしか分からない悩みなんだからっ」
ち「へ?」
か「お〜いちゅに〜ん!、メシ食ったら外出てドッジボールしねぇか?」
ち「お?、かんたにせのりじゃん、どした?」
せ「今、ボクたちしか集まってないんだ、君たちもやろ〜よ?」
き「ドッジかぁ〜久々だなぁ、よし乗ったっ、腹ごなしにいっちょ行きますか!」
ち「オッケー、んじゃ早いトコ支度するか!」
こ「ちゅにんくん、ピーマンもちゃんとたべましょうっ!」
ち「う・・・」
せ「ハハハ、こはきゅちゃんの言う通りだ、早く食べちゃいなよ」
か「先に行ってるぞ〜」
き「のえるはどうする?」
の「うん、私も行く!」
め「ドッジボール・・・ドッジボール・・・」
き「ん・・・? める姉・・・?」
ち「うぇ・・・食べたぞ・・・!」
こ「ちゅにんくんエラいっ!」
ち「あ・・・アハハハ・・・・゜(*´∀`)」
め「先生もやるっ!!!」
の「うわぁ、先生!?」
き「珍しいな・・・める姉が率先して運動するなんて・・・」
こ「ねぇねぇ、どっじぼ〜るってなぁに?」
ち「お外に出たら説明したげるね」





私も昔はこの子達くらいな具合だった。
あなたたちから見れば、そうね・・・ハンドソープのボトルサイズくらいがちょうどいいかしら?

でも、さすがに500超えはマズい気がしてきたの。
いちごみたいに背が高ければ気にならないかも知れないけれど、
私はいちごほど背は高くないし、スタイルも・・・


妖精って、公平なのか不公平なのか。
みんな丸っきり一緒だったら、それはそれで面白みが無いのかも知れないけれど、
私はなぜ太りやすい体質になってしまったのだろうか。
・・・そういえば、私の家族は今はみんなお仕事の関係で誰も居ないんだけれど、
父も母も太りやすい体系だったのだろうか。
私の記憶では食卓でもリビングでもそんな話をしたような覚えは無い。
もっとも、父の前でそんなことを議論するには抵抗があり過ぎる訳だが。

でも・・・両親は少なくても私が最後に見たビジョンでは――・・・


細かった。


では、何が原因なのだろう。


思い当たる節は・・・まぁ、色々あるんだけれど。


とにかく、子供たちのドッジボールに混ざるだけでも、きっと違いが出るはずだ。





か「さて・・・今日は思いのほかたくさん集まったわけだが、チーム分けはどうする?」
せ「いつもみたいにグーチョキパーで決めればいいんじゃない?」
か「でも今日はいつになく参加が多いからなぁ〜、どっしよっか?」
の「難しいことはないわ、とにかくグーチョキパーで3つのチームにしちゃって、一番少ないチームがグーチョキのどっちかを出すようにすれば、一発で決まったとして2回で済むわ」
せ「なるほど!さすが優等生、頼りになるなぁ☆」
ち「さっそく決めよう!」
き「よぉし・・・!」


せ「あれ、チョキチームがひとり溢れる・・・」
の「合計が奇数だもの」
か「うむ・・・グーチームには悪いがちょいハンデ戦になるけどいいか?」
ち「う・・・ハンデか・・・!」
き「私は平気だ! ひとりやふたり、どぉってことない!」
め「おまたせ〜!」
き「める姉!?」
せ「あれ、先生も参加ですか?」
め「うん、たまには私も体動かさなくっちゃ、ね!」
の「これでちょうど半々ね」
か「よし、センセーはグーチームな!始めるぞ!」
き「せのり、こはきゅには手加減して上げろよ!」
せ「分かってるって!」
こ「こはきゅ、がんばるっ!!」



――次の日は筋肉痛にさいなまれ、職場では平静を装っていても、内心泣きたい気持ちでいっぱいだった。
でも、これを機に子供たちとドッジやサッカーをする機会が増え、私の計画も波に乗ってきた感があった――・・・と思った。


の「きおつけ、れい!」
*「さようならっ、またあした!」







トボトボ・・・

ち「・・・何か、先生の顔色がよくない気がするのは気のせいかなぁ?」
の「え?」
ち「ここんとこ、声に張りが無いというか、疲れているというか・・・今日もそうだったけど、ごはんあんまり食べてない・・・」
の「・・・・・・」
こ「せんせ、ゲンキ、ない・・・」
き「まさか、そんなに金欠だったのか・・・?」
ち「金欠?」
の「違うでしょ!!」
こ「ひゃうっ!」
き「な、何だよ、急に」
の「分からないの? ごはんをあまり食べない、最近になって男子たちに混ざってドッジやサッカーに積極的によく参加するようになった、そして今日持ってきたちゅにんくんのお菓子の時も」
ち「お菓子? あぁ、そう言やここんとこ差し入れても受け取らなくなっちゃったんだよ、せっかく作ったのになぁ」
き「待て!そこまでヒントを出されたらさすがも私にも分かったわ」
こ「え?なぁに、なぁに〜?」
き「のえる、せぇので言うぞ、いいな」
の「うん、せぇの・・・」




ダイエット。




き「ちゅにん、お前、しばらくお菓子持って来んな」
ち「え、ええ〜!?」
こ「こはきゅもイヤだぁ、ちゅにんくんのおかしたべたぁい!」
の「いや、持ってくるのはいいけど・・・先生の前でお菓子を出すのは止めにしましょ」
ち「ふぅ・・・分かったよ」
こ「よかったねぇ〜ちゅにんくん☆」
ち「こはきゅだけだよ、オイラのお菓子を愛してくれるのは」
こ「うん、あいしてるっ☆」
ち「・・・・・・(* - v -)」
せ「何ニヤニヤしてるの?」
こ「あ、かんたくんとせのりくんだ!」
か「ちゅにん、何か軽く入るモンない? 小腹減っちゃった」
ち「うん、あるよ〜・・・今日はコレ」
か「お、マフィンじゃん、サンキュ〜♪」
の「・・・何というか・・・色々大丈夫かしら」







・・・・・・私の計画はまだ始まったばかり。
部屋の本棚に積まれた、肥やしになりかけの雑誌たちを読み返す。

食べなければそれでいいとは何一つ書かれていなかった。

迂闊だった。
問題は食べ方だったのだ。

もう少しで私は倒れるところだった。


・・・・・・私の計画はまだ始まったばかり。
あしたもがんばろう。